テンプレお嬢様は犬も食わない!〜強がりお嬢様と泣き虫幼馴染〜



彼らの姿が、空き地の入口の向こうに遠のいていく。

さっきまで耳障りなくらい響いていた笑い声も、足音も、もう聞こえない。

残ったのは、夕暮れの空き地を抜ける風の音だけだった。

破れたブルーシートが、パタ……と頼りなくはためいている。

錆びた自転車の影が、夕日に引き伸ばされて、やけに長く見えた。


あたしはまだ、スマホを構えたままだった。

口元には、さっき作ったお嬢様の笑み。

もう誰も見ていないのに、手までひらひらと振ったまま。


「ごきげんよ〜う」


その言葉の余韻だけが、間抜けに空き地に残っていた。

しばらくして、不良たちの背中が空き地の先の公園の向こうへ完全に消えた瞬間。

ガクン、とスマホを持っていた腕が落ちた。


「……は」


膝から力が抜ける。

そのまま、あたしはへなへなと地べたに座り込んだ。


「は……ハハ。あたし、やっつけた……よね?」


笑ったつもりだった。

いつもの調子で、どんなもんだい、って言ってやるつもりだった。

だけど、出てきた声は思ったよりずっと細くて、情けないくらい震えていた。


「……あれ?」