「触らないでください」
そう言った真央の声は、これまで聞いた中で一番低い声だった。
「……クソがっ」
真央に手を掴まれた不良はそう吐き捨てて、真央の手を振り払った。
だけどそれ以上迫ってくることもなく、睨み返してくるだけ。
視界の端に映る、大きな真央の存在感に、あたしの口角が自然と上がる。
「……チッ。行こうぜ」
「え、でも……」
「どう見てもやばいだろ、あの目、見ろよ」
そう言ってあたしと真央の目を交互に見る三人。
……ん?
なんであたしも入ってんの??
あたしはお嬢様の慈しみに満ちた目をしてるでしょーが。
三人は落とした棒切れを拾うこともなく、尻尾を巻いて空き地の入口へと後ずさっていく。
……尻尾ないけど。
「あら、もうお帰りですの?」
あたしはにっこり笑った。
「めんどくせえ。行こうぜ」
そう吐き捨てたリーダーみたいな不良がそう言ってあたしたちに背を向けた。
「もう二度と動物に手を出さないでくださいね〜。二度目はないですわよ〜!」
三つの背中はまだ何か言いたいことがありそうで、「ガキのくせに」「覚えてろよ」なんて言葉が途切れ途切れに聞こえてくる。
絵に描いたみたいな負け犬の遠吠えにクスリと笑う。
「ごきげんよ〜う!」
逃げるみたいに去っていく背中に声をかける。
お嬢様サービスで、ひらひらと手まで振ってあげた。
……後で高くつくんだからね。


