「ごきげんよう。お取り込み中失礼いたします」
あたしは真央の背中の陰から、一歩だけ横に出た。
……お取り込ませた張本人はあたしな気がするけど……まあいいや。
「改めまして。わたくし、桐ヶ崎雅と申します」
背筋はまっすぐ。
首をほんの少し傾けると、綺麗にとかした髪がふわりと肩に落ちた。
朝の小鳥のさえずりみたいな可愛らしい作り声で、桐ヶ崎の名を名乗る。
だけど、目だけは笑わずに三人を見据えた。
「……桐ヶ崎、という名前に、お聞き覚えは?」
三人が顔を見合わせる。
「桐ヶ崎って……まさか、あの桐ヶ崎グループの?」
「ええ。お知りおきいただき、たいへん光栄ですわ」
あたしはにっこりと、目を三日月の形に細めた。
そして真央の横からさらに一歩、前に出る。
「あいつ、さっきとキャラ違いすぎだろ」
とヒソヒソ声が聞こえてきて、一瞬眉間が引きつりそうになる。
だけどあたしはもう、慌てたりしない。
「桐ヶ崎グループは地元に根付いた事業も展開しておりますの」
続けるあたしに、不良三人組は「意味がわからない」とでも言いたそうに顔を見合わせている。
「そうですわね……あなたたちでもご理解いただけるように言い換えますと、この地域の警察の方々には大変お世話になっておりますの。それから、その制服は……北高校ですわよね? そちらの校長先生とも、父は古いお付き合いですのよ」
三人はようやく意味を理解したらしい。
眉をしかめて、なんとも情けない表情になった。
いい気味。


