真央が、軽々とあたしを後ろの方へと押しやった。
一瞬であたしは2匹の犬の横に並べられて、目の前には真央の背中しか見えなくなった。
「ねえ、真央、なにするつもりなの!」
真央が肩越しにちらりとあたしを見下ろした。
「雅さん、大丈夫ですから」
それだけ言って、真央はまた前を向いてしまった。
真央は、あたしを背中に隠すみたいにして、そっと一歩前に出た。
「真央っ!!!」
あたしが叫んでも真央はもう、振り返らない。
「なーんだ、お嬢様はお口だけですかぁ?」
「男出てきたけど、1対3で勝てると思ってんの?」
棒きれを肩に担いだヤツを先頭に、三人があからさまにあたしたちを煽りながら近づいてくる。
それに応じるみたいに真央がゆっくり前に出た瞬間、三人の笑い声が一瞬止まった。
でも、すぐに先頭の男が鼻で笑う。
「な、なに? 怖い顔すればビビると思った?」
それでも真央は何も言い返したりせず、前だけを見ていた。
どうしよう。
こわい。
こわい、こわい、こわい……!!
あたしのせいだ。
真央が止めたのに、行くって言ったあたしのせいだ――!!
そのとき、足にふわりと何かが触れた。
「……!」
びっくりして足元を見ると、マロンがぴったりとあたしの足に寄り添っていた。
マロンが「クゥン」と小さく鳴いて、あたしを見上げる。
あたしの足に当たるマロンの暖かくてふわふわの毛の向こうから、トク、トク、と小さな鼓動が伝わってきた。
あたしはそっとマロンの頭に手を伸ばした。
怖くない、わけじゃない。
指先が、ふわりと柔らかい毛に触れる。
そのまま手のひらで頭を包んで、ぎこちなく撫でつけた。
「……大丈夫」
それはマロンに言ったのか、あたし自身に言ったのか、わからなかった。


