「みなさん、おはようございます。今日も一日、笑顔で過ごしましょうね」
朝の昇降口。
すれ違うみんなに、にこりと微笑みかける。
背筋はまっすぐ。
首をほんの少し傾けると、綺麗にとかした髪がふわりと肩に落ちた。
朝の小鳥のさえずりみたいな可愛らしい作り声に、みんながぽっと頬を染めて会釈を返してくる。
桐ヶ崎雅、15歳、中学3年生。
某・桐ヶ崎グループの社長令嬢にして、清く慎ましやかなお嬢様。
——というのが、世間さまの評価らしい。
……くだらねー。
今時そんなステレオタイプのテンプレお嬢様なんて、犬も食わないっつーの!
そう思うのに、今この瞬間「お嬢様テンプレ」を演じているあたしの評価はそこそこ良くて。
それがまた、むかつく。
「雅さん、眉間……」
あたしの少し後ろから控えめな声が聞こえた。
振り返らなくてもわかる。
あたしの幼馴染兼ボディーガードの真央。
はあ?と凄みそうになるのを堪える。
「……なあに?」
「寄ってます……」
「……。」
あぶない、舌打ちが出そうだった。


