千夏が送ってくれた写真の中のマロンは、首に赤いバンダナを巻いていた。
だけど目の前のマロンのバンダナは、マロンの口をふさぐみたいにぐるりと巻きつけられている。
あたしの全身から、血の気がサーッと引いていく。
「……なに、あれ。なにあれ、なにあれ……!」
あたしは思わず真央の手を離してマロンの方へと足を踏み出した。
その瞬間、野良犬はマロンの横にぴたりと体を寄せて、低く唸った。
あたしの肩がビクッ、と跳ねる。
まるで、「それ以上近づくな」と言っているみたいだった。
「……そっか、きみがマロンを守ってくれてたんだね」
あたしたちのところに飛び出してきたのも、唸って威嚇していたのも、マロンを守るためだったのかもしれない。
それなのにマロンのところまで案内してくれたのは、あたしの言葉が通じたから……?
そう思ったら、不思議とさっきまでの恐怖心が少し薄れた。
あたしはそろり、そろり、と2匹の犬に近づく。
「ちょっと、雅さん……!」
「だいじょうぶ、話せばわかる」
あたしは唸る野良犬と、口をふさがれたマロンの前にゆっくりとしゃがんだ。
さっき、真央がしたみたいに。
「あの、あたし、桐ヶ崎雅と申します。千夏ちゃんに頼まれて、マロンを助けに来ました。あなたたちを怖がらせに来たんじゃありません」
とりあえず、丁寧に自己紹介と目的を伝えてみた。
そして、さっき真央がしていたみたいにそっと手を差し出した。
指先は震えているし、心臓のBPMなんて120をとっくに超えてる。
だけど、ここで引き下がるわけにはいかない。
だって、あたしは解決屋さんだもん。
怖いからって、困ってる子を見捨てるなんて、そんなのダサすぎる。
あたしが千夏ちゃんの目を見て「必ず見つけ出す」って言ったんだから。


