それは、マロンよりずっと大きかった。
黒っぽい毛の、痩せた野良犬。
薄暗い闇の向こうに、二つの目がギラリと光っていた。
牙をむき、低くうなりながら、まっすぐこちらへ突進してくる。
ヴヴッ……!
まだずっと先にいるはずの犬の唸り声が耳元で聞こえた気がした。
「きゃーーっ!」
気付けばあたしは、頭を覆ってその場にしゃがみ込んでいた。
「みやびちゃん!?」
焦ったような真央の叫び声。
いつかの記憶が鮮明に脳内を駆け巡る。
こわい。
こわい、こわい、こわい……!!
だれか、たすけて。
神様……まお……ッ!!
息が浅くなる。
肩でハァハァと息をしながらぎゅっと目を瞑る。
……だけど、想像していたようなことは何も起こらなかった。


