テンプレお嬢様は犬も食わない!〜強がりお嬢様と泣き虫幼馴染〜



公園の裏手へ向かう道は、さっきまでの賑やかさが嘘みたいに静かだった。

舗装された道から離れて草むらの中を進んでいく。



そうしてたどり着いた空き地は、夕暮れの光にじっとり沈んでいた。



「うわー……いかにも、って感じ」


雑草が腰の高さまで伸び、捨てられた家具や錆びたドラム缶が転がっている。

壊れたフェンスの隙間から中に入ると、湿った土と、何かが腐ったようなにおいがした。

風でパタ……とはためくブルーシートがなんとも不気味だった。


「……さすがにちょっとヤバいかなぁ〜なんちゃって」


初めて肌で感じる不穏な空気に、ガラにもなく弱音が漏れた。


「何言ってるんですか……今更ですよ。僕から離れないでください」

「うん……」


いつの間にかあたしの前を歩いていた真央の通学バッグに、そっと手を伸ばす。

そして、バッグの持ち手を後ろからぎゅっと握った。



……正直、めちゃくちゃ後悔してる。


だって、ただの空き地に犬がいるだけだと思ったんだもん。

まさかこんなに雰囲気たっぷりの、ドラマでしか見たことないような『ザ・不良の溜まり場』みたいな空き地だとは思わないじゃん……。



それなのに、真央は躊躇うことなく奥へと入っていく。

真央だって昔は夜の廊下を怖がって、あたしに「ついてきて」って泣いてたくせに。


スカートと靴下の間の地肌に葉っぱが当たる。

「……!」

それだけで、さっきから過敏になっている身体がびくん、と跳ねた。

身体中の毛が逆立つくらい、普通に怖い。


「……雅さん」

「なっ、なに」

「バッグ、壊れそうなんですけど」

「うるさいな、今はそれどころじゃないでしょ。そのときはあたしのと交換してあげるってば」

「……。」


真央はそれ以上なにも言わず、歩くスピードを少しだけ落とした。



あーもうやだ。

今すぐにでも帰りたい。



そう思うのに、あたしの足は止まらない。

止まってくれない。


千夏の「マロンが……」って震えた声と、泣き腫らした目を思い出したら、足が勝手に前に出た。



そのとき――


草むらの奥から、地を蹴る音とともに巨大な影が、飛び出した。



「ワンッ、ワンワンッ」