【 side:雅 】
おばあさんを家まで送って、庭のブルーベリーを袋いっぱいにもらった。
それを抱えながら真央と来た道を戻る。
「おばあさん、マロン、見てないって言ってたね」
あたしがそう呟くと、真央が「そうですね」と小さく言った。
おばあさんはマロンを見ていなかったけど、公園の子どもたちなら何か知っているかもしれないと教えてくれた。
だからあたしたちはアドバイス通り、公園に向かっている。
「……マロン、大丈夫かな」
「心配ですか?」
真央にそう聞き返されて、素直に「うん」と頷く。
「あたし、犬は嫌いだけど犬が不幸になればいいとは思わないんだよね。それに、マロンは千夏の大切な家族だしさ」
「……そうですね」
そんなことを話しながらあたしたちは公園までやってきた。
公園には小学生がたくさんいて、誰に声をかけようか迷うほどだった。
そのとき、グラウンドの方からサッカーボールが転がってきた。
あたしはそれを、黒いローファーのつま先で止めた。
「すみませーん! こっちに蹴ってください〜!」
小学生の男の子が、ぴょんぴょんと飛び跳ねながら声を張り上げている。
「……よーし!」
まくる袖なんかないのに、半袖のブラウスの袖をぎゅっと掴んで、まくるふりをする。
「雅さん……」
そんなあたしに真央が呆れているけど、気にしない。
「そーれっ!」
ポン! という軽い音と共に高く跳ね上がったボールは、綺麗な弧を描いて小学生のもとへと飛んでいく。
そしてちょうど、男の子たちの目の前にボールは着地した。
遠くの方でパチパチと拍手が起こる。
「おねーちゃんすごーい!」
「どんなもんだい!」
「雅さん……」
呆れる真央のことなんて、気にしない。
「ねぇねぇ、きみたち! ちょっと聞きたいことがあるんだけど〜!」
今度はあたしが、小学生の男の子たちに向かってぶんぶんと手を振った。
三回目の「雅さん……」が聞こえてきそうだけど、気にしない。


