「こちらはわたしの幼馴染の真央くんです。見た目は少し迫力があるんですけど、とっても力持ちなんですよ」
雅さんが、ふふっ、と上品に微笑む。
「それに、こう見えて実は手先が器用で。このストラップも彼が作ってくれたんです」
そう言って雅さんが自分のスクールバッグで揺れる、シャチのぬいぐるみストラップをおばあさんに見せた。
それは、シャチが好きな雅さんに「シャチのストラップって売ってないのな。真央、作って」と言われて、僕が型から作ったものだった。
ちなみに、雅さんがシャチを好きな理由は「海で一番強いから」。
おばあさんが、僕が作った荒い縫い目が丸わかりのシャチのストラップを見て、口元を緩めた。
「……そうなの。とっても上手にできてるわね」
おばあさんは、僕を見上げた。
再び目が合った時、雅さんに向けたのと同じ笑顔を僕にも向けてくれた。
「……ありがとうございます」
「さっきはびっくりしちゃってごめんなさいね」
「いえ、大丈夫です」
「じゃあ、これをお願いしてもいいかしら」
「はい」
僕はおばあさんから買い物袋を両手に受け取った。
「おうちはこの近くなんですか?」
「ええ。そこの角を曲がったところなの」
「まあ! それならお家までお運びしますね」
雅さんがおばあさんとそんなことを話しながら僕の前を歩いている。
おばあさんと目線を合わせて、くすくすと笑う雅さん。
雅さんはその仕草を「桐ヶ崎雅」を演じていると思っているかもしれない。
だけど僕から見たら、素の雅さんも人と話すときは目線を合わせる人だから。
雅さんが思っているほど別人でもないのにな。
……なんて言ったら、雅さんがどんな顔をするか想像できてしまう。
「今ね、お庭にブルーベリーがたくさん成ってるのよ。よかったらお礼に持って帰ってちょうだい」
「いいんですか? とっても嬉しいです、いただきます」
そう笑った雅さんのスカートの裾が、ふわりと揺れた。
その背中を追いかけるのは、昔から僕の役目だった。
でも今は、ただ置いていかれないように走っているわけじゃない。
何かあった時、すぐに手を伸ばせるように、僕は彼女の後ろにいるんだ。
そんなことを思いながら、僕はまた雅さんの後ろ姿を見つめた。


