【 side:真央 】
その日の放課後、僕たちは千夏さんに送ってもらったマロンの写真を手がかりに、学校周辺での聞き込みを開始した。
コンビニ、スーパー、警察署、動物病院――。
「……そうですか。お時間いただきありがとうございました」
雅さんが店員さんに礼儀正しい角度でお辞儀をした。
その後ろで僕も同じようにペコリと頭を下げる。
「やっぱ、簡単には見つかんないか〜」
ため息混じりの雅さんの言葉遣いは完全に『桐ヶ崎雅』の仮面が外れている。
「おいー、どこいったんだよマロン。こんなに愛されて、何を逃げ出すことがあるんだね」
雅さんは、千夏さんに送ってもらったマロンの写真を薄目で見つめている。
マロンは、茶色い中型の雑種犬。
耳が片方だけ垂れていて、首には赤いバンダナを巻いている。
写真の中のマロンは、千夏さんに抱かれて、舌を出してしあわせそうに笑っていた。
「かわいい顔してるのに……犬なんだよなぁ」
雅さんが、なぜか悔しそうにそう呟いた。
「犬じゃなくて、何ならいいんですか」
つい、そんなことを聞いてしまった。
雅さんは昔から犬が苦手だけど、それ以外の動物を怖がっている印象はない。
「うーん……ライオンとか?」
「ライオンって……エンカウントした瞬間、死を覚悟するレベルですけど」
「犬も同じようなもんだよ」
雅さんはむすっと口を尖らせて言った。
丁寧に手入れされたツヤツヤの髪が風になびいて、そのむすっとした横顔さえ、どこか絵になる。
……雅さんが、頬にかかった髪を鬱陶しそうに手で払いのける、その瞬間までは。


