【 side:雅 】
こわい。
こわい、こわい、こわい……!!
だれか、たすけて。
声にならない「たすけて」を何度も何度も頭の中で繰り返して、とうとう膝を抱え込んでしゃがみ込んだ。
にげなきゃ。
立って、走って、にげなきゃ。
だけど足がガタガタふるえて、立ち上がれない。
ああ、もうだめだ。
目をぎゅっと閉じて、だれか、だれか、と心の中で唱える。
ちゃんとお父さまの言うこと聞きますから。
ピアノのお稽古もがんばりますから。
かわいいお洋服よごしませんから。
まおに優しくしますから。
だから神様、あたしを守って――
そう思った時、あたしの前に誰かが立った気配がして、そっと目を開いた。
あたしより小さな背中が、目の前に立ちはだかって、短い両手をめいっぱい広げていた。
だけどその背中はズビズビと何度も鼻水をすすりながら、手の甲で涙を拭っている。
自分だって怖いくせに、あたしを振り返ることなく前だけを見ていた──。
『みやびちゃんは……ぼくが、まもるっ……!』


