私、春野瑞希は、梶本尚と結婚式を挙げた。
式が終わり、お互いの実家に挨拶をして、親戚からまた祝福の言葉をもらい、夕方に新居である一戸建ての賃貸で一息ついた。
「瑞希さん、市役所に行こうか!」
「え、なんで?」
「婚姻届出しに行こう。休日に裏口で受け付けてくれるって書いてあるよ」
尚は市報を私に見せながら言った。
そこには確かに、土日の市民サービスの欄に、婚姻届の受付と書いてある。
「へえ、そうだね、結婚記念日と結婚式が一緒の日、同居初日で、本当に今日がスタートだね」
「うん」尚はニコニコしてる。
私は姉に借りていた着物を脱いで、尚も礼服を脱いだ。
「ちょっとヒゲ剃ってからね」
そう言って尚は洗面所に消える。
髭剃りをする彼をじっと見ていると、鏡の中で目が合って、にっこり笑われる。
その微笑みは、私からすれば作為的だ。
尚は鏡に映る私より、自分自身の方が好きだ。
新妻に微笑む自分が、新妻より好きなのだ。
今日という記念日に婚姻届を出すという行動も、私からすれば随分作為的である。
私が喜ぶと思っていて、喜ぶ自分を見て自分が喜びたいだけなのだ。
市役所まで、車で10分ほどだ。
裏口を探して守衛室の入り口のような小さいドアの呼び鈴を押すと、休日出勤の警備員さんらしいおじさんが出て来て、婚姻届を受け取ってくれる。
「おめでとうございます!」
ニコニコしたおじさんに二人で頭を下げた。今日婚姻届を出したのは私達だけじゃないだろう。
だけど、おじさんが本当に嬉しそうで、おじさんの嬉しい気持ちを、私は逆にもらった気がする。
これで、もう私たちは他人じゃない。
日曜日の市役所は静かだ。
「おめでとうだって」
尚はニコニコしてる。
私は「うん」と答えた。
「ねえ瑞希さん」
「何」
「僕は僕のことが一番好きだ」
「知ってる」
「でも、僕は自分の次に瑞希さんが好きだ」
「……それで?」
「うーん、愛してるよ!」
「知ってる」
「瑞希さん、耳まで赤いよ。恥ずかしい?」
「……」
式が終わり、お互いの実家に挨拶をして、親戚からまた祝福の言葉をもらい、夕方に新居である一戸建ての賃貸で一息ついた。
「瑞希さん、市役所に行こうか!」
「え、なんで?」
「婚姻届出しに行こう。休日に裏口で受け付けてくれるって書いてあるよ」
尚は市報を私に見せながら言った。
そこには確かに、土日の市民サービスの欄に、婚姻届の受付と書いてある。
「へえ、そうだね、結婚記念日と結婚式が一緒の日、同居初日で、本当に今日がスタートだね」
「うん」尚はニコニコしてる。
私は姉に借りていた着物を脱いで、尚も礼服を脱いだ。
「ちょっとヒゲ剃ってからね」
そう言って尚は洗面所に消える。
髭剃りをする彼をじっと見ていると、鏡の中で目が合って、にっこり笑われる。
その微笑みは、私からすれば作為的だ。
尚は鏡に映る私より、自分自身の方が好きだ。
新妻に微笑む自分が、新妻より好きなのだ。
今日という記念日に婚姻届を出すという行動も、私からすれば随分作為的である。
私が喜ぶと思っていて、喜ぶ自分を見て自分が喜びたいだけなのだ。
市役所まで、車で10分ほどだ。
裏口を探して守衛室の入り口のような小さいドアの呼び鈴を押すと、休日出勤の警備員さんらしいおじさんが出て来て、婚姻届を受け取ってくれる。
「おめでとうございます!」
ニコニコしたおじさんに二人で頭を下げた。今日婚姻届を出したのは私達だけじゃないだろう。
だけど、おじさんが本当に嬉しそうで、おじさんの嬉しい気持ちを、私は逆にもらった気がする。
これで、もう私たちは他人じゃない。
日曜日の市役所は静かだ。
「おめでとうだって」
尚はニコニコしてる。
私は「うん」と答えた。
「ねえ瑞希さん」
「何」
「僕は僕のことが一番好きだ」
「知ってる」
「でも、僕は自分の次に瑞希さんが好きだ」
「……それで?」
「うーん、愛してるよ!」
「知ってる」
「瑞希さん、耳まで赤いよ。恥ずかしい?」
「……」



