抱き寄せて、キスがしたい

 会社を出て、大きく息を吐く。
 ずっとドキドキしっぱなしだった。
 和泉くんてあんなに甘えん坊だったんだ。
 いつもの仕事を頑張っている姿からは想像がつかなかったけれど、ずごく可愛いと思ってしまった。

 それに、あの綺麗なつむじ。
 触れた瞬間、これ以上ないほどゾクゾクした。
 満たされて、癒された。
 こんな感情は、はじめてだ――。
 
 つむじが好きだと気づいたのは中校生のころだった。
 体育の授業でストレッチをしているクラスメイトの頭頂部を見て、なぜだか無性に触りたくなった。
 そして触ってしまった。
 はじめに感じるのは髪の感触。少しだけかき分け触れた肌の温度に気持ちが高揚したのがわかった。
 頭を触るなと怒られたので、その後は観察だけして触ることはしなくなったけれど。
 でも観察すれば観察するほど、いろいろなつむじがあり、自分の中で好みがあることにも気づいてきた。
 なぜこんなにつむじが気になるかはわからない。
 だけど、あの人間の一番てっぺんにある、微かに見える無防備な肌にどうしても惹かれてしまう。

 今日出会った和泉くんのつむじは、本当に心を震わされた。
 頭を撫でていいってことは、また触れるってことだよね。
 いや、こんな邪な気持ちで触れていいわけない。
 彼は、仕事を頑張ったことを褒めて欲しいだけなんだから――。