抱き寄せて、キスがしたい

 ドキドキしたぁ。
 あんな素敵なつむじを隠し持っていたなんて。
 いや、別に隠してなんていないだろうけど。

 その後いろいろと仕事が立て込んで、全て終わるころにはもうだれも残っていなかった。
 荷物をまとめ、席を立つ。
 フロアの電気を消そうとしたけれど、一台パソコンの画面が付いていることに気づいた。
 まだだれかいるのかな? それとも消し忘れ?
 デスクにいくと、そこには突っ伏して眠っている和泉くんがいた。

 最近忙しそうだし、疲れてるんだろうな。
 彼はいつも一生懸命で、責任感が強い。真面目すぎるところがあるからきっといろいろと抱え込んでいるんだろう。
 頑張っていることを知っているから、少々のミスはカバーしてあげようと思ったのだけど、逆に気を負わせてしまったのなら申し訳ない。

 でもどうしよう。起こしたほうがいいのかな。

 迷っていると、昼間のことを思い出した。
 綺麗な放射線を描いた毛流れの真ん中にあるつむじ。
 もう一度見たい。あわよくば触りたい。いや、それはだめ。

 でも、見るくらいならいいかな……。

 私は突っ伏した和泉くんの頭をそっと覗き込む。
 横に流れた髪に、微かに見える地肌。やっぱり、綺麗。
 
 無意識に手が伸びていた。

「篠宮さん?」

 その瞬間、和泉くんが目を開けた。
 
 行き場を失った私の手。
 目の前にある手のひらに、和泉くんは不思議そうな目を向ける。
 
「えっと……」
「何か、しようとしてました?」

 つむじを触ろうとしていたなんて絶対に言えない。
 気持ち悪いと思われて、引かれて嫌われるに決まっている。
 どうやって誤魔化そう――