私だけの盾~冷徹上司の広い肩に溶かされて~

 最寄駅から徒歩数分。不快な満員電車から解放された私は、いつものように出勤した。
 
「おはよう、鞠乃。ねえ、ちょっと聞いた?」

 オフィスの自席に着いてしばらくすると、隣の席にいる同期の美咲(みさき)が神妙な顔で声を潜めてきた。視線の先は、ガラスで仕切られた課長席だ。
 そこには先ほどまで私の盾になってくれていた八木下課長が席に座っていて、そばには後輩社員の佐藤(さとう)くんが神妙な面持ちで立っていた。

「昨日、八木下課長が佐藤くんの企画書をバッサリ切り捨てたらしくて。今朝はリベンジだろうね」
「え……企画書を?」
「うん。データが甘い、これじゃ予算は下りないって、低い声で淡々と突き返したみたい。そのあと佐藤くん、悲痛な顔で修正作業に入ってたからなあ。課長はやっぱり厳しいっていうか、冷血っていうか……」

 美咲は、自分なら心が折れるとでも言わんばかりに肩をすくめて、自分のパソコンに向き直った。