私だけの盾~冷徹上司の広い肩に溶かされて~

「あれは親会社との大型契約の案件だ。接待で会食が続いていただけで、結婚なんかする予定はないし、そもそも相手がいない」
「え? …… ウワサはデマだったんですか?」
「そうだ」

 きっぱりと否定されてしまい、頭の中が真っ白になる。じゃあ、私は勝手に勘違いして、勝手に失恋して、勝手にあきらめなくちゃともがいていたの? 穴があったら入りたい。
 恥ずかしさで顔が一気に熱くなってくる。そんな私を、課長はあきれた表情で見下ろしていた。

「なるほど。俺が結婚すると思ってたから、様子が変だったわけか。ところで、なんでそんなに落ち込むんだ?」
「それは……」

 答えに困る私に、課長は逃がさないとばかりに詰め寄ってくる。

「安心しろ。君をほかの男に任せる気はない」
「……え?」
「毎朝あんな顔で震えてるの見せられて、放っておけるわけないだろ」

 意味深な言葉が聞こえてきたせいで、落ち着いてきていた心臓が再びドキドキと早鐘を打ち出した。

「前から知ってた。君が人混みが苦手なこと。ずっと見てたから。本当はつらくてたまらないのに、顔に出さずに大丈夫ですって無理して笑おうとするところも」
「全部気づかれてたんですね」

 ふっと、課長の口もとがゆるんだのを見て、私も苦笑いを浮かべた。すべてお見通しだとは思わなかったけれど。