氷の王子を笑わせたいっ!

「あと、本当にわたし、ど素人だからね? あんまり怒られたら、心折れるから」

「……善処する」

 そう言いながら、上本くんがすっと視線を逸らす。


 ねえ、これ絶対怒る気満々だよね?


「それじゃあ、せめてもうちょっと笑顔でお願い! 笑顔で言ってくれたら、怖さも半減すると思うから」

「それは……ムリだ。野球は――――――――――」

「え?」


 よく聞こえなかったけど、今、「野球は楽しむものじゃないから」って言ったような……?


 上本くん、楽しくないことをわざわざやってるの?

 それとも、辞めたいって思いながらやってるってこと?


 そんなことを考えていたら「とにかく」という上本くんの声が聞こえ、ハッと我に返る。


「三年生にとって、次が最後の大会なんだ。頼む。力を貸してほしい」

 そう言って、上本くんがわたしに向かって深々と頭を下げた。


 そっか……。上本くん、先輩たちのために代わりのピッチャーを探してたんだ。

 普段全然笑わないし、他人には無関心な冷たい人なのかと思ってた。

 けど、先輩たちのためにこんなに必死になっている姿なんか見せられたら……。


 自分がおせっかいな人間だって自覚はあるし、そのせいでこんなことになってるってのもわかってる。

 けど……けどさ、やっぱり困ってる人を見たら放っておけないよ。


「……わかったよ。わたしなんかで本当に役に立つとは全然思えないんだけど。とにかくやってみるよ」