氷の王子を笑わせたいっ!

「……なにやってるの?」

「へ……?」

 マウンド上でひとり高々と両手をあげる自分に気づいて、かぁっと頬がアツくなる。


「いや、これは、その……あはははは」

 慌てて両手をうしろに隠すと、ぎこちない笑みを浮かべてみせる。


「……まあいいけど。それより今の球、なかなかよかった。なにより狙ったところに寸分の狂いもなく投げ切るそのコントロール。やっぱり思った通りだ」


 それって、暗に「よくも俺の顔を狙って雑巾を投げつけてくれたな」って言ってません?


「一ノ瀬、野球経験は? なにか部活はやってる? 週末はいつもなにをしている? それから――」

「ち、ちょっと待って! 質問が多すぎるから」

「ああ……ごめん」

「えっと、まずは野球経験だっけ? 野球はやったことないけど、前はよくお父さんと弟とキャッチボールはしてたよ。部活はなにもやってないし、週末はいっつもダラダラ……えっーと、家でのんびりしてる」


 小六の弟は、小四のときに近所の少年野球チームに入ったんだ。

 それまでは、週末になるたびに、わたしやお父さんがキャッチボールの相手をしていた。


 ま、チームに入ってからは、誘われることもなくなったんだけどね。

 ……いや別に寂しくなんかないけどね?