氷の王子を笑わせたいっ!

「上本くん、さっきはありがとう!」

「別に。キャッチャーとして、当然のことをしただけだし」

 わたしの方をチラリとも見ずに、ベンチに向かって歩いていく上本くん。


「上本くんも、ハイタッチ!」

 わたしがグローブを掲げてハイタッチを要求すると、やっとわたしの方を見てくれた。


 そしてキャッチャーミットを掲げてハイタッチ!


「最後、ナイスボールだった。次の回も、その調子でよろしく」

「う……うんっ! 任せて!!」


 これって、ホメてくれてる……んだよね?

 は、初めてこんなに直球でホメられたかも。

 ヤバい。緩んだ口元が全然元に戻ってくれないんだけど。


「そ、そうだ。水分補給しとかなくっちゃ。上本くんも、打順が回ってくるまでに、ちゃんと水分補給しとかないとだよ。今日はかなり暑くなるみたいだし、熱中症にでもなったら大変だからね!」

「大丈夫。一ノ瀬に言われなくてもわかってる。何年キャッチャーやってると思ってるの?」

 ベンチに戻ると、すぐさま水筒を傾け、ゴッゴッゴッと喉を鳴らす。


 そんな姿も絵になるなあ、なんて思いながらぼーっと眺めている自分に気づいて、パッと視線を逸らす。


 いやいや、見つめてる場合じゃないでしょ、わたし。

 わたしもちゃんと水分補給!

 それからちゃんと休む!


 まだ試合は始まったばかり。

 あと六回もあるんだからね。