氷の王子を笑わせたいっ!

 ……ねえ、やっぱり今笑ったよね?

 こんなに大ピンチなのに。


 ……そういえば、いつの間にか指先の震えが止まってる。

 さっき叫んだおかげかも。

 このために、わざわざあんなことを言いに来たの?


 手に持ったボールをキュッと握りしめる。


 本当に……敵わないなあ。


 改めて上本くんがサインを出し、ミットを構える。


 うん、わかった。そこに投げ込めばいいんだね。


 小さくうなずくと、わたしは投球モーションに入った。


「ナイスボール!」

「一ノ瀬ナイス!」

「ありがとうございます!」

 ベンチへと戻る途中、先輩たちがグローブでハイタッチしてくれる。


 あのあと、1点は取られたものの、遠藤くん直伝の変化球で森下くんをゲッツーに打ち取ると、次のバッターは空振りの三振。

 急に制球が安定したわたしの方をチラチラ見ながら、二人とも首をしきりに捻っていた。


 ふふっ。わたしだって、やればできるんだからね。

 けど、一番はやっぱり――。