氷の王子を笑わせたいっ!

「本当にごめんなさい! も、もう絶対にしないから」

 必死に謝罪するわたしの手首を、雑巾を持っていない方の手で上本くんががしっと掴む。


「一緒に来て」

「……へ⁉」

 わたし、拉致られてボコられる⁉!?!?!?


「あんまり時間ないから。急いで」

 わたしの手首を掴んだまま、上本くんが教室の出口に向かって歩きだす。


「根岸、これ、片づけといてくれる?」

「お、おう。了解」

 根岸が上本くんから雑巾を受け取ると、わたしに向かって『ざまみろ』とでも言いたげな顔をする。


 むっかつくぅ~!!!!

 だいたい誰のせいでこうなったと思ってるわけ⁉


 ……っていっても、雑巾を投げたのはわたしだし。

 しょうがないってわかってはいるんだけど、なんか納得いかない。


「さっさと歩いて」

 大股でずんずん歩いていく上本くんに、ぐいっと手を引かれる。


「ち、ちゃんと歩いてるってば」


 上本くんの歩くスピードが速すぎるんだよ。

 大柄というほどではないけど、ちょうど女子の平均身長くらいのわたしより十センチは高い。

 足の長さの違いをちょっとは考えてほしい。


『何事だ?』と言いたげな表情で、すれ違った人たちがわたしたちを目で追っている。


 恥ずかしいから、手だけでも離してほしいんだけど。

 けど、そんなことを言える雰囲気でもないし……。


 あ~もうっ。いったいどこに連れていかれるの~⁉