氷の王子を笑わせたいっ!

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 練習に明け暮れる日々が過ぎ、ついに大会当日がやってきた。


「ははっ。いきなりの大ピンチってヤツだなあ!」


 一回表、ヒットでつながれ、ノーアウト満塁。

 打席に立った四番バッターの森下くんがあおってくる。


 そんなこと、改めて言われなくたってわかってるし!


 言い訳するわけじゃないけど、指先の震えが全然止まってくれなくて。

 そのせいで、初球からずっとコントロールが定まらないんだ。


「タイムお願いします」

 上本くんが、マウンドまでやってくる。


「わかってるよ。ちゃんと構えたところに投げろって言うんでしょ?」

 そう言いながら、じわっと涙がにじむ。


 できるなら最初からやってるよ。

 いくらやろうとしてもできないから困ってるのに。


「いや、そうじゃない。俺の顔に雑巾をぶつけたときのこと、覚えてる?」

「っ……! それはもう言わないって約束だったよね⁉」

 わたしが叫ぶと、上本くんが、「ふっ」と声を漏らす。


 え、今、笑っ……。

 そんな自分にハッと気づいたのかひとつ咳ばらいをすると、上本くんがいつものポーカーフェイスでもう一度口を開く。


「あのときのコントロールは本当に最高だったから。あれをしっかり思い出して投げてきて」

「も、もう、わかったから! ミットを上本くんの顔だと思って投げればいいんでしょ⁉」

「うん。それでいい」

 わたしがヤケになって大きな声でそう言うと、上本くんは定位置へと小走りで戻っていった。