氷の王子を笑わせたいっ!

 腹ごしらえをしたわたしたちは、参考書を買いたいという上本くんと一緒に本屋へ行ったあと、解散になった。


 今日わかったことは、上本くんはやっぱり野球が好きだってこと。

 それからアニメも見るし、ガチャガチャもする普通の男の子だってこと。


「あー、楽しかったなあ」

 勉強机の上に飾った南くんのフィギュアをちょこんっと触る。


 きっと上本くんの机の上にはわたしが当てた東条くんのフィギュアがいるんだ。

 えへへっ、なんだかお揃いみたいでうれしい。


 上本くんが、実は推しの南くんソックリだってこともわかったし……。


 ……あれっ。ちょっと待って。

 ひょっとしてわたし、なんかすごいこと言っちゃってない⁇


 わたしが大好きな南くんと上本くんがソックリだって。


 だから、上本くん赤くなってたの⁉


 ち、違うから!!


 わたしが好きなのはあくまでも南くんであって、上本くんのことは別に好きってわけじゃ……。


 わけじゃない、よね?


 わたしはただ上本くんに笑顔を取り戻してほしいだけで、別にそういう感情はない、よね?


 いやいや、ないないないない。

 わたしたちは野球部のバッテリーで、それ以上でもそれ以下でもないんだから。


 今一番大事なのは、上本くんと……ううん、野球部のみんなと力を合わせて、森下くんたちのチームに勝つこと!

 そしたらきっと、上本くんも笑顔になってくれるはず。


 うん。大好きな野球で勝つこと。これ以上にうれしいことはないはずだもん。


「ようし。明日からまた気合入れてがんばるぞーっ!!」

 気合の声とともに、わたしは両手を天井に向かって突き上げた。