氷の王子を笑わせたいっ!

「……まあ、そうなりますよねー」


 うん。予想通りといえば、予想通りの展開。

 たどり着いたのは、ショッピングセンターの三階にあるスポーツ用品店。


「た、楽しい?」

「うん」

 硬式野球用グローブを手に取って眺める上本くん。


「高校でも野球続けるの?」

「まだわからない。けど、多分やると思う。野球以外やりたいと思わないし」

「そっか。野球、好きなんだね」

「……好き、なのかな。どうなんだろ。わからない」

 グローブを手に取ったまま上本くんが静かに言う。


 前のわたしだったら、どうして好きかわからないようなことをやってるんだろうって思ったと思う。

 けど今は、好きかどうかもわからなくなるほど上本くんの心が傷つけられたんだって思ったら……。


 危ない、危ない。

 こんなところで間違っても泣くわけにはいかないのに。


 すーはーとこっそり深呼吸して心を落ち着かせる。


 でもさ、ちゃんと好きなんだよ、野球が。

 だから今でも続けてるんでしょ?

 楽しいって思ってほしいよ。


 でも、こんなことを思うのって、やっぱりただのおせっかいなのかな……。


 そう思ったら、なにも言えないよ。


 いつもなら、頭で考えるより先に、体と口が動いちゃうくらいなのに。


 わたし、上本くんをこれ以上傷つけたくないって、臆病になってる……?


 ぎゅっと胸の前で両手を握りしめる。


「ねえ、他には? 上本くん、他に見たいとこないの?」

「……あるけど。本当にいいの?」

「もちろんだよ!」