氷の王子を笑わせたいっ!

 このままごまかしきった方がいいってこと?

 まあ、それしかないのかもだけどさあ。


「あー、そうだった! 俺、次教室移動あったわ。そんじゃ、先行くな!」

 遠藤くんがひらりと手を振り去っていく。


 えぇっ、ちょっと待ってよお!

 わたしを置いて逃げないでーーっ!!


「えーっと……そ、そうだ。そろそろ午後の授業が始まる時間だし、わたしたちも教室戻った方がよさそうだよね」

「……うん」


 そして上本くんと並んで教室に向かって歩いていく。


 ……なんか顔がいつもより険しい気がするし、この無言の時間が気まずすぎるんだけど。


 上本くん、いったいなにを考えているんだろ。

 今度の試合のこと?

 それとも……わたしと遠藤くんのこと?


 やっぱりいい気分ではないよね。

 だって、遠藤くんはきっと上本くんの一番の友だちなわけで。

 遠藤くんを取られた……なんて思ってるかも。


 やっぱりさっきのは誤解だって言った方が……でも、だったらなんて言い訳するつもり?


「……邪魔してごめん」

 上本くんが、ぼそりと低い声で言う。


「へ⁉ いや、全然。さっきのは……えーっと……そう! 変化球の投げ方について、ちょっと相談をしてたんだよ。どうやったらもっと上手に投げられるようになるかなって」

 し、信じてくれるかなあ……。


 祈りを込めて上本くんの横顔をそっと見る。


「……そう。部員同士のコミュニケーションは大事だし、どんどん聞けばいいと思う」

 上本くんが、前をじっと見つめたまま言う。


 信じてくれた……?


「そう……だよね!」


 よかったぁ~。


 こっそりホッと胸をなで下ろす。


「だったらさ、あの……今度一緒に出掛けない⁉」

「え。なんでそうなるわけ?」

 わたしの突然の提案に、上本くんが眉をひそめる。