氷の王子を笑わせたいっ!

「うおっ!」

「わっ、ご、ごめんなさい!」

 空き教室を出た瞬間、ちょうど教室の前を通りかかった男子にぶつかりそうになって、慌てて頭を下げる。


「いや、全然……って、あれえ? 珍しい組み合わせ。ひょっとして、ヒミツの作戦会議ですかあ?」


 ヒミツの作戦会議……?


 想定外の言葉が返ってきて、そーっと顔をあげる。

 目の前には、薄ら笑いを浮かべた男子が立っていて、わたしと遠藤くんを交互に見比べていた。


「翔真かよ。……別に。おまえには関係ねーだろ」

「関係ないってこともなくない? だって、こいつなんだろ? おまえの代わりピッチャーって」

「だったらなんなんだよ」

 遠藤くんが、なんだか苛立った声を出す。


「別にぃ? ま、百回やったって勝つのは俺たちだし」

「そんなん、やってみなくちゃわかんねーだろ」

「え。おまえ、ひょっとしてこいつで勝つつもりだったわけ? 先輩たちの思い出作りのためだったんじゃねーのかよ。鬼監督にビビってチーム辞めた根性ナシがよく言うわ。だいたいただでさえたいした守備力もないのに、こいつ……ぷっ……こいつで勝つつもりって……!」

 翔真くん――たしか隣のクラスの森下(もりした)翔真(しょうま)くんだったはず――が、わたしを指さしながらお腹を抱えて笑い出した。


 なんなの、このムカつくヤツ!!!!


「悪い……こいつ、俺らの昔のチームメイト」

 苦い顔をした遠藤くんが、森下くんを親指で指す。


「そんで、今度の大会の対戦相手」