氷の王子を笑わせたいっ!

 しんと静まり返った教室内。

 遠くの方でにぎやかな話し声がする。

 なんだか別世界にでも迷い込んだみたい。


「どこから話したらいいかなあ……」

 そう言って、遠藤くんが遠い目をする。


「……俺、拓海とは小2でチームに入ったときからバッテリー組んでんだけどさ。昔はどんなピンチのときでも、笑顔で俺のこと引っ張ってくれてたんだよね、アイツ」

「ピンチでも笑顔で……えぇっ!? 上本くんが??」

「ははっ。やっぱそんな反応になるよな。今の拓海しか知らなかったらさ」

 こくこくと何度も大きく首を縦に振る。


 だって、遠藤くんが上本くんの笑顔を見たことがあるってだけでもすごいことなのに、どんなピンチのときでもって……。

 でも、そんなピンチでさえも、きっと楽しんでいたんだ。小学生時代の上本くんは。


「けど、小6んときに監督が新しくなってさ。その監督が、とんでもないパワハラおやじで。そいつが『試合中にヘラヘラするな! おまえのせいで点を取られたんだ!!』って、毎回毎回拓海のことばっか大声で怒鳴りやがって……」

 話しながら、遠藤くんが体の横でぎゅっとこぶしを握りしめる。


「俺が投げてんだから、俺が責められるのはわかる。けど、俺の球が荒れるのも、暴投をうしろに逸らしたのも全部拓海のせい。もちろん反論しようとしたこともあったんだぜ? だって、完全に俺のせいじゃん、そんなの。なのに拓海のヤツ、俺には一切口出しすんなって……」