氷の王子を笑わせたいっ!

「とりあえず、構えたところに軽く投げてみて」

「うん」

 こくりとうなずくと、上本くんのミットめがけてボールを投げる。


 パンッ!


「ナイスボール」

 上本くんからボールが返ってきて、それをグローブでパシッと受け止める。


 なにこれ。めっちゃ気持ちいいんだけど⁉


 何球か投げたあと、「次はもう少し強めに投げてみて」という指示。


 パンッ!!


「うん、ナイスコントロール」


 えへへっ。またホメられちゃった。

 こんなときでも、上本くんはニコリともしないんだけどね。


 ……なんかさあ、意地でも上本くんのことを笑わせたくなってきたんだけど。


『野球は楽しむものじゃない』?

 そんなことないよ。

 絶対楽しんだ方がいいに決まってる。


 よしっ。そうと決まれば、家族の大爆笑をかっさらった伝説のアレを披露してみせようじゃないの!


「……プロ野球選手の投球モノマネとかしなくていいから。真面目に投げて」


 上本くんに真顔で返された。


 はい、完敗ですっ!

 っていうかむしろ恥ずかしくて泣きたい!


 じゃあ、いったいなにをしたら上本くんは笑ってくれるの?


「俺を笑わそうとしてもムダだから」


 はいっ、また心読まれましたーっ!


 むむっ。こうなってくると、余計におせっかい魂に火がつくじゃん。

 絶対の絶対に笑わせてやるんだからね!


 でも、まずは上本くんの言う通り真面目に練習しなくっちゃ。

 おせっかいを焼くにしても、ちゃんとやることをやってからだよ。