氷の王子を笑わせたいっ!

「そうだ。今週末は練習試合の予定だから。一ノ瀬に投げてもらうから、そのつもりで準備しといて」

「いやいやいやいや、さすがに早くない!?」

「そんなことはわかってる。けど、大会も迫ってるし、実戦形式の練習は絶対にしておいた方がいいと思う」


 それはまあ……練習試合もナシでいきなり大会って言われるのも不安だけど……。


「どれだけ練習をしたとしても、初めての練習試合は不安なものだから」

 上本くんが、グラウンドの方を見ながらそう言ったあと、わたしの方にすっと視線を向ける。


「けど、一ノ瀬の目の前には俺がいる。とにかく俺だけを見て投げればいいから」

「う、うん……」

 上本くんにじっと見つめられて、なんだか目が逸らせない。


 そのとき――。


「練習再開!」

 キャプテンの加藤先輩の声がして、「はい!」と返事をしながら上本くんがすっと立ちあがる。


 その瞬間、やっと金縛り状態から解放されて、わたしはホッと小さく息を吐いた。


「次、ピッチング練習するから、準備して」

 そう言いながら上本くんが歩きだす。


「わ、わかった!」

 グローブを持って慌てて立ちあがると、先を行く上本くんの背中を小走りで追いかけた。