氷の王子を笑わせたいっ!

 はぁ~~……なにこれ。

 めっちゃ覚えることが多すぎて、頭がパンクしそうなんだけど。

 野球って、投げたり打ったりするだけじゃないんだ……。


 休憩に入ると、日陰に座ってそれぞれ水分補給をしたり、談笑したりしている。


 午前中はどんよりとした曇り空だったけど、部活の時間を狙ったかのように雲が晴れ、ぐんと気温が上昇。

 むしむしする暑さが体にまとわりついてくる。


 練習はハードだし、外はすでに運動をするような気候じゃないのに、みんな笑顔ですっごく楽しそう。

 きっとそれだけ野球が好きってことなんだろうな。


 少し離れたところに一人で座っている上本くんに、チラリと視線を向ける。


 上本くんは、相変わらずニコリともしないんだよねえ。

 まあ、そういう人なんだって、わかってはいるんだけどさ。

 けど、楽しむ余裕なんか全然ないわたしとは違って、上本くんは好きなことをしてるはずなのにね。

 だったらもっと楽しそうな顔をすればいいのに、なんておせっかいなことを考えちゃう。


「なに?」

 わたしの視線に気づいたのか、上本くんが相変わらずのポーカーフェイスでわたしの方を見る。


「う、ううん。なんでもない!」


 そういえば、この前、『野球は楽しむものじゃないから』なんて言ってたんだっけ。

 でも、本当に楽しくないのかなあ。