神の愛


「一旦、これは俺と学の預かりにしろ。俺は警察で、学は市役所で該当乳児を確認する」
「え、僕も確認するん?」
「市役所の子ども課でも市民課でも確認できるだろ。社会福祉課所属でも、戸籍の取り扱いはこちらよりお手のものだろう」
「まあ、否定はできないんけどさ。ま、流石に放っておくのも法に触れるし、やるはやるわ」

 警察勤めの父親と市役所勤めの兄。普通なら疑いようのない普通の家族なんだけどなと思いながら、二人の会話をぼんやりと見つめる。

 手許をペチペチと小さな手が叩いてくる。

 哺乳瓶を少し高く上げれば、ゆりかごに揺られながらミルクを飲んでいた赤ちゃんは嬉しそうにポヤポヤと笑う。誰にも似ていない顔。嬉しそうに笑うその顔はふるさとにいた俺より年下の子ども達に似ていた。

「学の方は午後にでもある程度の結果は出るだろう。俺の方は早くても明日だ。正確な情報は1週間ほどかかるだろう」

 親父の言葉にだろうなと思いながら、赤ちゃんを抱っこする。温かい頬が俺の頬に触れる。子ども体温だからか少し熱く感じる。

「じゃあ、(えい)くん、午後、市役所来てな~。子ども課には言っとくから午後に鳴ったら子ども課の誰かに声掛けてくれや」
「ちょっと待て。じゃあ、学のところに行くまで、俺はこのまま?」
「その間はお前が子守歌でも歌って面倒見てろ、恵介」

 親父と学の話を片耳で聞きながら赤ちゃんのげっぷを出させるために背中をトントンと叩いていれば、学が俺の肩をポンポンッと軽く叩く。

 は?

 午後にならないと市役所で問い合わせられないってことは午前中は俺がこの子の面倒見なくちゃいけないのかよ。俺、赤ちゃんの面倒見たことなんてないぞ。

「皆仕事で出てしまうからね。頑張ることだよ、東舞くん」
「クソが。死ねや、叔父さん。つか、『そっち』で呼ぶのマジでやめろ」
「こら、亮は叔父さんでしょ。叔父さんに対する言葉遣いじゃないわよ」

 ニコリと笑いかけてきた叔父さんの顔にあまりにも、苛つく。無関係なことをいいことに協力する気ねぇな。

 そんな叔父さんをお袋は庇う。いくら、自分の血の繋がった弟だからって、この放任主義野郎のこと庇う必要ないだろ。

「うるせぇ、黙れ」
「黙るのはお前だ、恵介」

 お袋を睨み付ければ親父から睨まれる。この二人の間の愛は間違いなく存在するんだな、なんて場違いのことを考えてしまった。