ショートスリーパーの貴方と不眠症の私

「月菜ちゃん、いらっしゃい。久しぶりだね」

あれから二ヶ月と少しが経ち、外は少しずつ冬景色となってきた。

もう、凛ちゃんに嫌なことをされることはなくなった。

そのため、少しずつだけど眠れるようになり、夜に朱音ちゃんと会うことはほとんどなくなった。

最近は、メッセージでのやり取りばかりになっている。



「朱音ちゃん、お邪魔します。今回もよろしくね」

今日は冬休みに入ったため、朱音ちゃんの家にお泊まりする。

夏休み前に私が、体調を崩した時以来。

親には、友達の家に泊まると言ってきた。



「どうぞ。月菜ちゃん、前より顔色が良くなってるように見える。最近、眠れてるの?」

私が荷物を整理していると、朱音ちゃんはそんなことを言いながらお菓子を持ってきてくれた。

「あっ、お菓子ありがとう。最近は凛ちゃんとのことが解決したから、よく眠れているよ」

用意してもらったお菓子を食べる。

昼食を済ましたばかりなのに。



少ししてから、私はふと思い立って鞄の中を漁る。

「朱音ちゃん、メリークリスマス。これ、大したものじゃないけど……」

私は小さなラッピングされた袋を、朱音ちゃんに渡した。

「ありがとう。全然考えてなかったけど、今日はクリスマスだったね。なんかごめん」



「気にしなくていいよ。朱音ちゃんの家でのお泊まりだけで充分。開けてみて」

私は気を使ったわけではなく、本心だ。

姉妹でのお泊まりというのは、一緒に暮らしているような気分になれる。



「うん。あっ、すごく可愛い。着けてみてもいい?」

中身は、赤いリボンのヘアゴムにした。

朱音ちゃんはそれで長い髪を結った。



「朱音ちゃん、似合ってるよ」

「本当?ありがとう」

そして、手鏡で自分の姿を確認している。

気に入ってくれてよかった。

買う時に、好みじゃなかったらどうしようとたくさん悩んだから。



「朱音ちゃん。朱音ちゃんのことをお母さんとかに言ったらだめかな?誰かに言わないと言われてるの?」

布団を敷きながら、朱音ちゃんに訊ねてみた。

もう、隠してるのは限界だと思う。

夏休み前や合唱コンクール前のこともあって、薄々気づかれていてもおかしくないと思う。

朱音ちゃんは無言で布団を敷いている。

しばらく、テレビの音しか聞こえない。



「ご、ごめん。急に……」

「月菜ちゃんは悪くない。でも、もう少し時間ちょうだい」

私の声にかぶせるように、朱音ちゃんが声を発した。

いつもの朱音ちゃんより、暗い声に聞こえた。

「うん。わかったよ」



「昨日のことについて、答えてもいい?」

朝食を取りながら、朱音ちゃんが開口一番に言った。

昨日のことというのは、朱音ちゃんのことを私の両親に話していいかということ。

私は無言で頷く。



「昨日、遅くまで色々考えたんだけど、月菜ちゃんの家に直接行って話してみようと思ってる」

朱音ちゃんはそれから、いろんなことを詳しく教えてくれた。

まず、本当はずっと秘密にして、このままの状況で過ごしていこうと思ってたこと。

自分を見捨てたと思える人だから、関わりたくなかったから。

でも、私のことも考えて、現実的にも厳しいと思ったから会うことを決意したこと。

だから、私が帰る時に一緒に家に行こうと考えていること。



「それでいいかな?月菜ちゃん」

朱音ちゃんは自信に満ちた表情だ。

「朱音ちゃんがたくさん考えて、決めたことなんだからいいに決まってるよ」