ショートスリーパーの貴方と不眠症の私

「ソプラノ、声小さい。アルト、音程あってない。男子、真面目にやって」

夏休み明けの練習。

指揮者の子や伴奏者の私もいるのに、凛ちゃん中心で練習が進んでいく。



「で、でも、ここは……」

「黙ってて。次、行くよ」

指揮者の子が何かを言おうとするけれど、凛ちゃんは聞く耳を持たない。



「月菜、ピアノ使わせて」

「あ、う、うん」

凛ちゃんもピアノを弾けるみたいで、練習中に私が使っているピアノを使ってくる。

でも、私は凛ちゃんに逆らえない。

もしかしたら、私を練習させないで失敗させる作戦なのかもしれない。



こんな状況で無事に当日を迎えられるのだろうか。

私は朱音ちゃんとお揃いのシャーペンで楽譜に要点などを書き足しながらそんなことを考える。



今日は合唱コンクール当日。

私のクラスの出番は真ん中くらい。

次々に、他のクラスの出番が終わっていき、私のクラスの出番がやってきた。



指揮者の合図で鍵盤に指を置き、弾き始める。

みんなの歌声は正直、上手とは言えない感じだった。

練習の時も思ってたけど、練習を真面目にした人としていない人の差が激しくて、まとまりがなかった。私は失敗することなくやり遂げた。



「月菜のせいで賞取れなかったんだよ。反省しているの?」

その日の放課後、凛ちゃんが責めてきた。

「私、大きな失敗したかな?」

私は意識して、落ち着いた口調で話す。

私は初めて凛ちゃんに自分の意見を言えた。



もし、賞が取れなくて私に何か言ってきたら、言い返しなさいと朱音ちゃんがあらかじめ助言をしてくれていた。

「そうだね」

凛ちゃんは思ったよりすぐに、引き下がってくれた。

気づくと、クラスには私たちだけとなっていた。

少しの間、沈黙が続く。



「月菜、今までごめんなさい。私だって、あんなことしたくてしてたわけじゃないの」

凛ちゃんが急に謝ってきた。

そして、凛ちゃんの目から涙がこぼれ落ちている。



「私、浜辺くんのこと好きだったの。でも、月菜が浜辺くんと一緒にいるところ見たら仲良さそうで嫉妬しちゃって、月菜に嫌なことたくさんした」

凛ちゃんは涙声で事実を説明してくれた。

浜辺くんは人気者らしいけど、凛ちゃんも片思いしてたなんて。



「あの時は、落し物を拾ってもらっただけだよ。誤解させちゃってごめんね」

「たくさんごめんね。じゃあね」

それだけ言って、凛ちゃんは教室を後にした。



「朱音ちゃん今日こんなことあったんだ……」

家に帰ってから、朱音ちゃんに電話をして、凛ちゃんとの会話の内容を話した。

「月菜ちゃん、よくやったね。それでこそ自慢の妹だよ」

「ありがとう、朱音ちゃん。疲れたから寝るね。おやすみ」

電話を切ると、すぐに寝付けた。