ショートスリーパーの貴方と不眠症の私

「月菜ちゃん、電気消すよ」

それから、お風呂まで貸してもらって、居間に二人並んで寝ることになった。

朱音ちゃんとは、あまり背丈は変わらないため、貸してもらった部屋着は私の体に馴染んだ。



「月菜ちゃん、今日は眠れそうかな?」

「今日は疲れたから眠れそう。でも、その前に話聞いてもらってもいい?」

私はうつ伏せになってから、思い切ってそう言ってみた。



「いいよ。私はまだ起きてるから」

朱音ちゃんも私と同じようにうつ伏せになり、話を聞く準備を整えてくれる。

ショートスリーパーで夜は暇と言っていたことを思い出した。

とても好都合で話を聞いてもらういい機会かもしれない。



「眠れない原因のことを聞いてもらいたいの。学校での出来事なんだけど……」

私は学校でクラスのリーダー的存在の子に、嫌がらせを受けていること。

その原因は平凡な私が人気の男子と話したこと。

男子とは話というより、落し物を拾ってもらった時に少し関わったというだけということも伝えた。



「それ絶対、月菜ちゃんは悪くないよ。眠れなくなるぐらいなら、学校行かなくていいんじゃないの?」

朱音ちゃんは私のために怒ってくれて、寄り添ってくれた。

それだけなのに、すごく心が軽くなったように感じる。



「ありがとう。そう言ってくれて。でも、どうして私達まだ数回しか会っていないのに、ここまで親身になってくれるの?」

ずっと考えていた。

泊まらせてくれて、手料理を振る舞ってくれて、なぜここまで来てくれるのかと。

まだあって間もないのに。

そもそも、なぜ最初に私に声をかけてくれたのだろうか。



「やっぱり、話すべきだよね」

それから、朱音ちゃんは自分のことについてたくさん話してくれた。

最初に、朱音ちゃんは施設育ちということ。

そして、高校生になってから施設を卒業して、一人暮らしを始めたこと。



それから、朱音ちゃんの親は私の親と同じだと言う。

月菜ちゃんという妹がいることを施設の人に教えてもらったとのこと。

私は驚きで理解が追いつかず、言葉が出ない。

何から話していいかわからない。



「そんなこと急に言われても困るよね。そういえば、私の名字教えてなかったね。小鳥遊だよ。同じだよね?」

名字のことも踏まえて確信した。

小鳥遊なんて珍しい名字で、偶然とは思いきれない。



「私たち、本当に血の繋がった実の姉妹なんだね」

「そうだよ。どうしたの?」

朱音ちゃんの言葉で自分が泣いていることに気づいた。

「……なんか、嬉しくて」



この暗闇が良い効果を与えてくれて、安心できたのかもしれない。

朱音ちゃんとの大事な日は涙が必須なのかな。

初対面の時もそうだったから。



「明日、学校休んで姉妹再開のお祝いということで私の家で過ごそう」

「うん。というか、いつから気づいてたの?」

私は即答した。今なら、学校なんてどうでもいいと感じられる。

朱音ちゃんの学校事情も気になったけれど、本人が言っているんだからいいんだよね。



「最初に、あった時は気づかなかったんだけど、名前と年齢を聞いて、声も似てるなと思ったから確信した」

そう言われてみると、なんとなく声の雰囲気が似てるかもしれない。

私は、姉がいること自体知らなかったから全く気づくことができなかった。



「そうだったんだね。そろそろ寝ないとね。おやすみ、おね、朱音ちゃん」

勢いでお姉ちゃんと言ってしまいそうになったけれど、本当に言っていいのかわからずいつも通りの朱音ちゃんと呼んでしまった。

「おやすみ、月菜ちゃん」



「あ、おはよう。月菜ちゃん」

物音とその声で目が覚めた。

慌てて時刻を確認すると、九時を過ぎていた。

「ご、ごめん。こんな時間まで寝ちゃって」



こんな時間まで眠れたのはいつぶりだろう。

久しぶりに体を休められたように感じる。

「ゆっくり休めて良かったね」

朱音ちゃんの慈愛に満ちた瞳からは、本気で心配してくれていることが伝わる。



それから私は、一旦荷物を取りに家に戻った。

家に入ると、いつもの仕事に行ってる両親が居た。そして、両親に激しく叱られた。

昨日、お母さんが仕事から帰ってきて私がいないことに気づいたらしい。

大騒ぎになったとのこと。

下校中に体調を崩してクラスメイトの家に泊まらせてもらったと伝えた。



朱音ちゃんのことは誰にも言わないでと口止めされているから。

荷物をまとめて学校に行くと言って、朱音ちゃんの家に向かった。

お母さんがまだ何かを言っていたけれど、構わず家を飛び出した。



その日は二人で家事をしたり、朱音ちゃんに勉強を教えてもらったり、一緒にゲームをしたりと姉妹らしいことをして満喫した。



「朱音ちゃん、今日はありがとう。すごく楽しかったよ」

「こちらこそだよ。月菜ちゃん。また来てね」

普段学校が終わるくらいの時間に、朱音ちゃんの家を後にした。

本当はもう少し一緒に過ごしたかったけれど、朱音ちゃんのことを両親に知られないためだ。