「ひぎゃあー!!!!」
隣の教室からおかしな叫び声が聞こえてくる。
「やだやだやだやだー!!!! カメムシいやあ!!!!」
何事かと思ったがすぐに何があったのか、察しがつく。また、いつもの「アレ」だ。もう何回目だ、この絶叫。そろそろ近隣住民から苦情来るぞ。
「ぎゃぎゅ、ごごげ、まっまっ、あな、え、ふあおえあかおいあはぴえもんぎゃあ!!!!」
いや、いつもより少し騒がしいか?
いや、いつも騒がしいわ。いつもより悲鳴が意味不明なだけだ。何の言語喋ってんの、あいつ。
「坂谷先生、またか〜」
「まただね〜」
生徒たちは口々に笑いながらそう言う。だが、それは呆れているような感じた。勿論のこと、俺も彼らと同じ思いだ。
そして、叫び声が聞こえなくなったかと思えば教室の前方の扉が勢い良く、バンッと音を立てて開け放たれる。おい、扉が壁にめり込んだぞ、馬鹿力女教師。ホコリを立てるな。
「美弥ちゃん、取って!!!」
「宮下と呼べ、坂谷ぁ!!!」
「やだ!」
「やだじゃねぇ!!」
「やだ!!」
「うるせぇ!!」
教室の扉が勢い良く開かれたかと思えば、頭に二匹のカメムシを乗せた同期の坂谷の姿。ほんっっっっっとうに同期だと思われたくない。近付くな。初任校が同じだった時点で退職すりゃあ良かった。
というか、美弥ちゃん呼ぶな!! もう半月で200回近く、美弥ちゃんって俺のこと言ってるだろ!!
「美弥ちゃんだってうるさいじゃん!」
「お前がうるさいからだ、それは」
「あ、そっか」
「急に冷静になるな。というか、毎度毎度何かがあったら2組に来るのやめろ」
「だって、5年2組の担任は美弥ちゃんじゃん」
坂谷の後ろを見れば、毎度のことながら戸惑っている生徒と呆れている生徒、喜んでいる生徒の姿がある。
喜んでるお前らだな、坂谷の頭にカメムシを乗せたのは。
「だ・か・ら・だ!! 俺の授業の邪魔だ!! 何回、その爆音ボイスで授業を妨害したと思う」
「20回?」
「97回だ!!」
「わあ」
「わあ、じゃねぇよ!!」
ブォンッ
坂谷の頭を持っていた教科書で横から叩く。だが、坂谷は持ち前の瞬発能力でしゃがみ込み、それを避ける。こういうときにその神の如くの身体能力を発揮するな。お前がインターハイで陸上全競技制覇したくらいの運動馬鹿なのは知っているが、今ここでそれを発揮するな。
「「「あ、」」」
「え、?」
そして風圧で床に落ちるカメムシ2匹。その動きはスローモーションで陽の光を一身に浴び、神々しく……。神々しく? いや、まったく神々しくねぇわ。どこか、神々しいんだ、これ。カメムシだから禍々しいに決まってるだろ。後で教科書捨てよ。
ビタッ
そんな音を立て、カメムシは床へと落ちた。
「ぎゃあーー!!!! うんぼろがらgぽおえいgまうがいえおらtがえprぺええmふぉろrばびがぬぢぬぅぅ!!!!」
「張り付くな! 首、首が絞まってる、から!!」
多分、過去最高に訳の分からない、翻訳不明な悲鳴が坂谷の口から発されたのと同時に、坂谷は驚異的な身体能力で俺の顔に飛びつく。両脚が俺の首を絞める。力、強い。前が見えんっ。死ぬ。死んんんんんんn。
「佩刀っ、カメムシを、窓の、外に、投げ捨てろっ!早く!」
「イエッサー、隊長!」
「俺は隊長じゃねぇーー!!」
横目に虫博士と名高い佩刀がカメムシに近付こうとしている姿が見えたので、酸欠になる前に指示を出す。
こんなときに虫を採取しようとするなっ。お前が虫関連でイグノーベル賞を受賞したいのは知っているけどっ!! 今はそのときじゃねぇっっ。
「いっちにぃのさん!!」
佩刀はカメムシ2匹を手に持つと空いていたもう一方の手で窓を開け、カメムシをぶん投げる。頑張って坂谷の身体から顔を離し、首を絞めらたまま、佩刀のいる方を見れば、健腕な小学5年生がカメムシを窓のぶん投げている。
というか、随分、健腕だな、おい。誰に鍛えられたその腕。
「坂谷っ、カメムシいないからっ、はなれろっ。ホントに、死ぬっ」
「私が?」
「俺が!!」
「あ、」
そして、ようやく自分が隣のクラスの担任兼同期である俺の首を絞めていることに気付いたらしい坂谷は俺から離れる。間一髪だ。いや、ただのカメムシ2匹で首絞めらてそれが原因で死んだら情けなさすぎる。
なんだ、死因「カメムシを目撃した教師による絞殺」って。死んでも嫌すぎるだろ。
「佩刀くん、ありがとう」
「いえいえ、こちらこそ!」
「おい、俺には何もなしか」
「あ、美弥ちゃんごめんね」
「ごめんで済んだら警察はいらないんだが?というか、美弥ちゃん呼ぶな」
「ごめん。いや、美弥ちゃんって呼ぶ」
「話聞いてないな!!」
「はい!」
「はいじゃねぇ! 返事するな!」
「…………………………」
ようやく、静かになる教室。クククと悪役のような笑い声が教室後方から聞こえてくるが無視しよう。俺と坂谷は新婚夫婦じゃねぇし、これは痴話喧嘩じゃねぇ。
「……………じゃあ、帰るね!」
「逃げるな、坂谷!!!」
「いや、授業あるからグッバイ、美弥ちゃん!」
「だから、美弥ちゃん呼ぶなって!」
「あ、」
「あ、?」
静まり返ったかと思えば、騒がしくその場を退散しようとする坂谷。壁にめり込んだ扉を引っ張り、閉めようとしていたがふっと何かを思い出したかのようにこちらに振り返る。
おい、逃げるな。せめて、扉と壁、弁償しろ。
「もう、何も乗ってないよね?」
そう言われて、怒りが喉元を過ぎ、ふっと坂谷の頭上に目を向ける。そういや、佩刀のやつ、教室の扉開けっぱなしにしてたな。
「…………あー、」
そこには大変に見覚えのある漆黒の素晴らしく格好良い羽を左右に大きく広げた「あいつ」の姿。
「何? 何?!」
面倒だな、言うか。
「カラス、頭の上に乗ってるぞ、坂谷」
「いやあー!!!!!!!」
今日も今日とても鳳蝶アゲハ学園初等科の一画にて坂谷サクの叫び声が響く。坂谷の頭上ではカラスがカーカーと鳴く。
そろそろ、耳壊れそう。鼓膜って弁償きくかな。無理? できない? 残念だ。じゃあ、自費で買います。
「あ、宮下センセー!」
「何だ」
坂谷が扉の周囲で意味不明な言葉で叫び倒しながらグルグル回っているなかで、自分のクラスの生徒の佩刀が元気良く手を挙げる。隊長呼び止めるの早ぇよ。
というか、なんで俺のクラスの生徒、全員揃ってあっ、て何かに気付いた顔してるんだ。
「予鈴鳴ったときからセンセーの頭の上に黒板消しあるって言い忘れてましたー!!」
「「「同じく!!」」」
「……………………ひっぎゃあああああ!!!!!」
「ぎゃあああああああああああーーーーーーー!!!!!! 美弥ちゃん来ないでーーーー!!!!」
ちなみに実は俺は潔癖症だっ!!! いや、これ実はじゃねぇな!! 黒板消しはマジ無理ーーーー!!!!
隣の教室からおかしな叫び声が聞こえてくる。
「やだやだやだやだー!!!! カメムシいやあ!!!!」
何事かと思ったがすぐに何があったのか、察しがつく。また、いつもの「アレ」だ。もう何回目だ、この絶叫。そろそろ近隣住民から苦情来るぞ。
「ぎゃぎゅ、ごごげ、まっまっ、あな、え、ふあおえあかおいあはぴえもんぎゃあ!!!!」
いや、いつもより少し騒がしいか?
いや、いつも騒がしいわ。いつもより悲鳴が意味不明なだけだ。何の言語喋ってんの、あいつ。
「坂谷先生、またか〜」
「まただね〜」
生徒たちは口々に笑いながらそう言う。だが、それは呆れているような感じた。勿論のこと、俺も彼らと同じ思いだ。
そして、叫び声が聞こえなくなったかと思えば教室の前方の扉が勢い良く、バンッと音を立てて開け放たれる。おい、扉が壁にめり込んだぞ、馬鹿力女教師。ホコリを立てるな。
「美弥ちゃん、取って!!!」
「宮下と呼べ、坂谷ぁ!!!」
「やだ!」
「やだじゃねぇ!!」
「やだ!!」
「うるせぇ!!」
教室の扉が勢い良く開かれたかと思えば、頭に二匹のカメムシを乗せた同期の坂谷の姿。ほんっっっっっとうに同期だと思われたくない。近付くな。初任校が同じだった時点で退職すりゃあ良かった。
というか、美弥ちゃん呼ぶな!! もう半月で200回近く、美弥ちゃんって俺のこと言ってるだろ!!
「美弥ちゃんだってうるさいじゃん!」
「お前がうるさいからだ、それは」
「あ、そっか」
「急に冷静になるな。というか、毎度毎度何かがあったら2組に来るのやめろ」
「だって、5年2組の担任は美弥ちゃんじゃん」
坂谷の後ろを見れば、毎度のことながら戸惑っている生徒と呆れている生徒、喜んでいる生徒の姿がある。
喜んでるお前らだな、坂谷の頭にカメムシを乗せたのは。
「だ・か・ら・だ!! 俺の授業の邪魔だ!! 何回、その爆音ボイスで授業を妨害したと思う」
「20回?」
「97回だ!!」
「わあ」
「わあ、じゃねぇよ!!」
ブォンッ
坂谷の頭を持っていた教科書で横から叩く。だが、坂谷は持ち前の瞬発能力でしゃがみ込み、それを避ける。こういうときにその神の如くの身体能力を発揮するな。お前がインターハイで陸上全競技制覇したくらいの運動馬鹿なのは知っているが、今ここでそれを発揮するな。
「「「あ、」」」
「え、?」
そして風圧で床に落ちるカメムシ2匹。その動きはスローモーションで陽の光を一身に浴び、神々しく……。神々しく? いや、まったく神々しくねぇわ。どこか、神々しいんだ、これ。カメムシだから禍々しいに決まってるだろ。後で教科書捨てよ。
ビタッ
そんな音を立て、カメムシは床へと落ちた。
「ぎゃあーー!!!! うんぼろがらgぽおえいgまうがいえおらtがえprぺええmふぉろrばびがぬぢぬぅぅ!!!!」
「張り付くな! 首、首が絞まってる、から!!」
多分、過去最高に訳の分からない、翻訳不明な悲鳴が坂谷の口から発されたのと同時に、坂谷は驚異的な身体能力で俺の顔に飛びつく。両脚が俺の首を絞める。力、強い。前が見えんっ。死ぬ。死んんんんんんn。
「佩刀っ、カメムシを、窓の、外に、投げ捨てろっ!早く!」
「イエッサー、隊長!」
「俺は隊長じゃねぇーー!!」
横目に虫博士と名高い佩刀がカメムシに近付こうとしている姿が見えたので、酸欠になる前に指示を出す。
こんなときに虫を採取しようとするなっ。お前が虫関連でイグノーベル賞を受賞したいのは知っているけどっ!! 今はそのときじゃねぇっっ。
「いっちにぃのさん!!」
佩刀はカメムシ2匹を手に持つと空いていたもう一方の手で窓を開け、カメムシをぶん投げる。頑張って坂谷の身体から顔を離し、首を絞めらたまま、佩刀のいる方を見れば、健腕な小学5年生がカメムシを窓のぶん投げている。
というか、随分、健腕だな、おい。誰に鍛えられたその腕。
「坂谷っ、カメムシいないからっ、はなれろっ。ホントに、死ぬっ」
「私が?」
「俺が!!」
「あ、」
そして、ようやく自分が隣のクラスの担任兼同期である俺の首を絞めていることに気付いたらしい坂谷は俺から離れる。間一髪だ。いや、ただのカメムシ2匹で首絞めらてそれが原因で死んだら情けなさすぎる。
なんだ、死因「カメムシを目撃した教師による絞殺」って。死んでも嫌すぎるだろ。
「佩刀くん、ありがとう」
「いえいえ、こちらこそ!」
「おい、俺には何もなしか」
「あ、美弥ちゃんごめんね」
「ごめんで済んだら警察はいらないんだが?というか、美弥ちゃん呼ぶな」
「ごめん。いや、美弥ちゃんって呼ぶ」
「話聞いてないな!!」
「はい!」
「はいじゃねぇ! 返事するな!」
「…………………………」
ようやく、静かになる教室。クククと悪役のような笑い声が教室後方から聞こえてくるが無視しよう。俺と坂谷は新婚夫婦じゃねぇし、これは痴話喧嘩じゃねぇ。
「……………じゃあ、帰るね!」
「逃げるな、坂谷!!!」
「いや、授業あるからグッバイ、美弥ちゃん!」
「だから、美弥ちゃん呼ぶなって!」
「あ、」
「あ、?」
静まり返ったかと思えば、騒がしくその場を退散しようとする坂谷。壁にめり込んだ扉を引っ張り、閉めようとしていたがふっと何かを思い出したかのようにこちらに振り返る。
おい、逃げるな。せめて、扉と壁、弁償しろ。
「もう、何も乗ってないよね?」
そう言われて、怒りが喉元を過ぎ、ふっと坂谷の頭上に目を向ける。そういや、佩刀のやつ、教室の扉開けっぱなしにしてたな。
「…………あー、」
そこには大変に見覚えのある漆黒の素晴らしく格好良い羽を左右に大きく広げた「あいつ」の姿。
「何? 何?!」
面倒だな、言うか。
「カラス、頭の上に乗ってるぞ、坂谷」
「いやあー!!!!!!!」
今日も今日とても鳳蝶アゲハ学園初等科の一画にて坂谷サクの叫び声が響く。坂谷の頭上ではカラスがカーカーと鳴く。
そろそろ、耳壊れそう。鼓膜って弁償きくかな。無理? できない? 残念だ。じゃあ、自費で買います。
「あ、宮下センセー!」
「何だ」
坂谷が扉の周囲で意味不明な言葉で叫び倒しながらグルグル回っているなかで、自分のクラスの生徒の佩刀が元気良く手を挙げる。隊長呼び止めるの早ぇよ。
というか、なんで俺のクラスの生徒、全員揃ってあっ、て何かに気付いた顔してるんだ。
「予鈴鳴ったときからセンセーの頭の上に黒板消しあるって言い忘れてましたー!!」
「「「同じく!!」」」
「……………………ひっぎゃあああああ!!!!!」
「ぎゃあああああああああああーーーーーーー!!!!!! 美弥ちゃん来ないでーーーー!!!!」
ちなみに実は俺は潔癖症だっ!!! いや、これ実はじゃねぇな!! 黒板消しはマジ無理ーーーー!!!!
