夜を越えてしまう前に

遥香は学校で有名だった。

頭が良くて、きれいで、誰にでも優しい。

でも私は知っている。

彼女が、誰にも見えない場所で息を殺して生きていることを。

昼休み、みんなに囲まれて笑う彼女は、放課後になると別人みたいに静かになる。

図書室の一番奥。
誰も来ない窓際の席。

そこが、遥香の居場所だった。

「ここ、好きなんだ」

「なんで?」

「みんなの声が遠く聞こえるから」

そう言って、彼女はイヤホンを片耳だけ外した。