「その手、大丈夫? ちゃんと直す?」
わたしが指を指すと彼は、隠すように自分の体の後ろに持っていく。
「いい」
このいいは、要らないのいいだ。怪我してるのに、ほんと意地っ張り。
「約束は明日だろ」
「でも、今日も学校有るんだよ。その手で行くの?」
「別に誰も何も言わないだろ」
セシルは足を進め始め、この階の階段へ向って行くから、わたしも着いていく。
「あなたが触れて欲しく無さそうにするからね。でも、みんな気にしてる」
「逆に、お前はいいのかよ? 俺に血をあげても」
振り向かれ突き刺すような目でわたしの目を見られドキッとしてしまう。
「良くは無いかもしれないけど、でも!」
「いらない」
セシルはそれだけ言うと前を向き、無言で階段を降りて廃ビルの出入り口まで向った。
ドアの前に置いておいたバリケードを退かし、壊れかけのドアを開けると、外はうっすらと明るくなり始めている。
まだ日は出ていないけど、もう早朝と言える時間だろう。
こんな時間までかかると思ってなかったのに。
帰って、報告書を書いて、シャワー浴びて。
「一時間は寝れたらいいな。あー、学校キツ」
ぽつり呟いたが聞こえていたらしい。
「そんなに嘆くことか? 学校で寝れば良い」
セシルはマントのフードを被ると、外に出る。
日光は吸血鬼の弱点で、彼も例に漏れず日光が苦手なのだ。
「不良すぎ」
わたしもローブを着て、全身を覆い外に出る。
わたしは日光が苦手なわけではなくて、刀を隠す為だ。
吸血鬼も吸血鬼ハンターも、世間に知られた存在ではあるが、どこか遠く、自分に関わりはないと思っている人が多い。
だから、刀を持っているのを見られると説明が面倒くさいのだ。
「学校、遅れないようにね」
先を歩くセシルに後ろから声をかけるが、返事は何もない。
「来なかったら、明日から迎えに行くから」
「お前は、俺のなんなんだ?」
むすっとした様子でセシルが振り向くから、わたしは告げる。
「バディだよ」
……監視兼ね。



