ちょっと離れた所に着地したが、すぐにわたしを置いていこうとするので引き留める。
「セシル! 焦るのは分かる。必死なのも! でもお願い、無茶だけはしないで。貴方が敵になってしまうのはイヤだ!」
セシルは、わたしを見る。
その目は確かにギラギラしているが、怒りだけではなくこちらを気遣うような心配の感情もあった。
「だけど、あいつらが渚を怪我させ、血を吸おうとしたんだろう! そんなの、許せるはずがないだろ!」
え……。
セシル、わたしが怪我させられたって思って、こんなに必死だったの?
セシルの感情が自分に向いている。
そんなこと、一度も思ったこと無かった。
だってわたしは、彼の嫌いな吸血鬼ハンターだし。
彼は白川のためにいつも必死で……。
「俺はもう絶対負けたくないんだ。大事な物は傷つけさせたくないんだよ」
大事な物。
セシルがそう括った枠の中にわたしも居るんだ……。
胸がぎゅっと苦しくなる。
これは、嫌なんじゃない。嬉しいんだ。
想いが、一方的な物じゃないと知れて。
「セシル……わたしも貴方に傷付いて欲しくないよ。体も、心も。今だけじゃ無くて、未来もずっと傷付いて欲しくない」
セシルは、驚いたようにわたしを見る。
わたしの言葉は彼にとっても予想外みたいだ。
もっと早く伝えておけば、ここまで無茶をしなかったかな。
でも、ここまで経ったから、こう想っていてくれるのかも。
「わたしが強かったら、それは簡単に叶うかもしれないけど、今はまだ一人でどうにか出来るほど強くない」
真っ直ぐ、セシルの目を見る。
「だから、二人で頑張ろう。わたしはずっと、貴方の味方だから。貴方と共に歩むから。あなたの願いを叶えるためにも、今、未来を狭めるようなことを欲しくない」
セシルは目をぎゅっと瞑ると、ゆっくりと開く。
わたしを見る目は、落ち着いたものになっていた。
「分かったよ」
彼はポッケから手袋を出すと、手に嵌めた。
「用意良いね」
「良いだろ別に。でも、吸血鬼相手の時は取るぞ」
「それでいいよ」
吸血鬼相手なら、問題にはならないし。
「お前は、その腕手当しないのか?」
「うん。ちょっとやりたいこと有るから」
セシルは、ちょっと嫌そうな顔をする。
女吸血鬼とそれを支えている眷属は、あんまり強く無さそうなので、どうにかしないといけないのは後二人。
「協力して、一体ずつ撃破しよう」
「ああ」



