セシルは、ちゃんとわたしを見ていた。
でも、頷いてはくれない。
「だけど、もう倒した後だ。別に今更、分析する必要はないだろ」
「能力以外にも、吸血鬼との関わりとか、大量発生の前兆とか色々見える物なの」
「俺だって馬鹿じゃない。そんな様子があったら荒らさない」
ムッとしたセシルからは圧を感じる。
彫刻みたいに整った顔に、温度を感じない目、青白い顔と真っ黒の重たそうな髪は、不健康で、近づきがたい、重い雰囲気を纏わせている。
その顔自体には見慣れてきたけど、不機嫌そうな顔をされると、ちょっと怖いのだ。
だけど、言いたいことはまだあるから、わたしの口は止まらない。
「あと、さっきの血の攻撃。灰にあなたの血が混じって分析しづらくなるから、止めてって言っているじゃん」
わたしの抗議に、セシルは不満げにぼやく。
「それなら俺を呼ばなければ良かっただろ。下等生物の時は呼ばなくて良いって、前に言った」
「でも、強くなりたいって言ったのは、そっち。今回くらいの眷属なら血以外の方法で倒せるようになりたくてそう言ったんじゃないの?」
セシルは黙ってしまう。
今度はムッとするんじゃ無くて、少し落ち込んだ感じだから、シンとした空気がわたし達の間に流れる。
……強くなりたいって気にしてたのに、言い過ぎたかも。
気まずくなってしまい、セシルの顔から目を離す。
彼をよく見ると、先ほど血だらけにしていた左の手は、ぐるぐると雑に包帯が巻かれているだけだった。
セシル右利きだけど、あんなのじゃ不便だろうな。
わたし巣の方に目を戻すと、回収するべき物だけを手に取り、立ち上がる。



