セシルがわたしを抱えて墓地に着いた時、夜の不気味な墓地には謎の人影があった。
月明かりで見えたその人は、スーツを着た三十程の男で、どこかの墓を掘ろうしている。
「あそこは!」
セシルはわたしを投げるように下ろしたので、なんとか着地する。
その間にセシルは男の元へ向っていて、そいつの肩を掴み振り向かせた。
「おい。そこで何をしている!」
その男の目は、焦点が合っておらず、真っ赤に充血していた。シャツが緩んだ首元には、噛み痕が見える。
間違いない、眷属化された人間だ。
「押さえて。注射を打つ」
わたしがそう言った時には、遅かった。
セシルは眷属男に向ってグーで殴りかかっている。
眷属男はなんとか腕で受け流していたが、二発目のパンチは駄目だったみたいで、肩に当たっている。
「がぁあああ」
眷属男は大きく叫び、肩を押さえている。
あれ、折れちゃったり脱臼してない?
いくら眷属化した人間が丈夫だからって、吸血鬼の本気パンチは効いてしまう。
「ちょっと、できる限り怪我させないでよ」
「分かってる!」
なんていうけど、セシルは追撃とばかりにパンチをしに行くので、その前に割り込んで鞘を付けたままの刀ですねを殴打し、眷属男を転ばせる。
そのおかげ無事にセシルの二発目は食らっていなかった。
「邪魔をするな!」
セシルがわたしに向って怒鳴るから、それにわたしも対抗する。
「邪魔って……あなたが焦りすぎなの! 普通に捕まえることだって出来るでしょ!」
「ちっ」
彼は大きく舌打ちをすると、転んだままの眷属男を踏みつけ、腕を縛り上げる。



