「今回の吸血鬼。あれが、白菊を攫ったやつの可能性ってあるのか?」
今までとは違った低く重苦しいセシルの声に、わたしたちの空気が一気に緊張感のある物になった。
「可能性だけなら有るけど、絶対そうであるとも、そうじゃないとも言い切れない。情報が少なすぎる」
今回の吸血鬼が、白菊さんを誘った吸血鬼かは分からないのは、今、日本に存在する吸血鬼が百五十人ほどだからだ。こんな不確定な状態じゃ、自信を持って断定できない。
せめて眷属の灰を分析できれば良かったが、椅子の灰は流され、机の方も灰を採取している間に椅子に襲われて確保はできなかったので、手掛かりは何にもない。
「そうか」
セシルは低い声で返事をする。
その険しい顔は今、白菊さんの事を考えて居るんだろうな。
……こんな時のセシルに聞きたくはないけど、先延ばしにしているのもよくないから、聞くしかない。
「セシルって、白菊さんにセシルくんって呼ばれてた?」
ギロッ。そんな音が聞こえてきそうな程、鋭い目でわたしを見る。
「呼ばれないが」
「そう……ああ、いや、夢に出てきたから何か意味あるのかなって」
元々、緊張感があったのにさらに不機嫌になってしまったセシルに慌てて弁明する。
さっき夢で見た中での最初の二つ。初めて会った時と、年を超した瞬間。
あのシーンは、本当にわたしとセシルの間に起きた過去だった。
でも、三つ目だけが憶えにないもので、何か関係があるのか聞いて起きたかったのだ。



