「もう遅いかも知れないけど、これ被っていたほうがいいんじゃない」
置いておいたセシルの学ランを投げると、キャッチされる。
あの得意技には日光が必要だけど、日光は吸血鬼にとっての弱点だから、セシルの体には良くない。
ほんと、セシルが使えるのって、こんなのばっかりなんだよね。
本人とってはそれでもいいかも知れないけど、側に居る方はひやひやとするのだ。
セシルが引き裂いた机を見に行くと、だいぶ酷い有様で金属部分までもがぐにゃりとちぎれている。
「うぁ、すごい光景」
灰になり始めていたから、急いで机を写真に収める。
そして次に、灰を回収しようとした時、何かが凄い勢いでぶつかってきた。
「ぐっ、なに?」
目をやると、それは椅子だった。
椅子は私にぶつかり、しゃがんでいたわたしを座席に乗せるような形になった後も、スピードを緩めること無く屋上を駆けていく。
「なに、これ」
わたしは椅子の背もたれを掴みながら、必死で考える。
こいつ、まだ生きていたの? 机の下敷きになって灰になったのかと。
もしかして、これがこの椅子の眷属になった時に授かった技とか?
って、そんな事を考えて居る暇は無い。
足を地面に置いて踏ん張ろうとするが、椅子の勢いに勝てない。
「ちっ」
ここで手を離したら、こいつに逃げられるかもしれないから離せない。
でもフェンスに一直線だから、このままだとわたしも屋上から落ちることになる。
セシルは気づいた時から走って追いかけてきてくれるけど、この椅子中々早いから間に合うかどうか。
ぶん殴って壊す? いや、流石に力が足りない。
わたしの考えが纏まる前に、椅子はフェンスを越そうと、高く飛んだ。
「ああ、最悪!」



