「そっち行った!」
三十㎝ほどに巨大化した蟻。
それが向った方に居るセシルに声をかけながら、わたしは走って蟻を追いかける。
「分かってるよ!」
返事をしたセシルは、自らの鋭い八重歯で手の甲を切ると、溢れる血で手を青く染めた。
「あ、ちょっと。その方法は!」
使っちゃ駄目!
って止める間も無く、セシルは青い血で染まった手で拳を作り、巨大蟻に向って殴りかかる。
巨大蟻の体のセシルの血が触れた箇所が、青白い火花を散らしながら黒い液体状になってボタボタと溶けた。
「うわ、ぐろ……」
生物だったものが溶けていく光景は不気味で、何度見ても見慣れない。
って、立ち止まっている暇はない。急がないと。
巨大蟻は、溶けた部分も、残った部分も、全部が灰になっていく。
手にしていた刀を鞘に仕舞うと、持っていた瓶で地に落ちた灰を回収する。
それが終わったら、今度はスマホで周囲の様子や、巨大蟻によって被害があった箇所を写真に撮っていく。
あれが最後の一匹だと思うけど、他にいたりしないか上から下まで見に行かないと……蟻だったし、外壁も確認しなといけないな。
写真を撮り終わり、瓦礫の上に座っていたセシルに声をかける。
「セシル。わたし、このビルを一周してくる。あなたはその腕を手当してて」
彼が返事をすることはないが、大人しくポッケから応急キットを取り出したから、わたしは見回りに向った。



