ほたる先生は振り向かない

修学旅行は毎年、京都に行くか、カナダに行くか、二択で選べる。

英語が得意で、ショートステイなんかも兼ねてカナダを選ぶ意識高い系の子も少数いるけれど。
私はしっかり周りの流れに合わせて京都を選んだ。


やっと新幹線に乗り込んだところで引率教員一覧を確認。

ずらっと並ぶ先生たちの名前の中に、──いた。
ほたる先生。

この新幹線のどこかにいるってことなんだろうな、とトンネルばっかりの窓の外に視線を向ける。


「まつり、まつり!」

「班行動の時さ、インスタで見つけたカフェ行かなーい?」

「あとパワースポットあるらしいからそこも行こーよ」

「あー……うん、いいよ」

周りの友達に声をかけられて、適当に返事をしながらやっと気づく。

私だけ、修学旅行のしおりを生真面目に開いていたことに。




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消灯時間なんて守る気のない女子たちが、ベッドの上に集まって恋バナを始める。

修学旅行の夜なんて、大体そういうものだ。


「まつりってさ、好きな人いるー?」

ペットボトルのお茶を飲んでいた私は、思いっきりむせそうになった。


「いや、いない」

「マジでー?私いま俊くん気になっててさー」

「争奪戦じゃん」

「でしょー?ワンチャンこの修学旅行で二人っきりなれたら…」

友達の恋バナを聞いているというのに、私は全然違うことを考えていた。


……今、私ちゃんと言えてたかな。
“いない”って、なんでもない顔で。


でも。
今日、新幹線に乗って最初に見たのは。

京都の観光地でも、班表でもなくて。
引率教員一覧だった。


こんなことを考えている時点で、たぶん、もう色々積み重なっちゃってる。




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