ほたる先生は振り向かない

「先生」

授業終わりに、さっさと教室を出ていった先生の背中を追いかける。
声をかけたっていうのに、全然振り向かない。

「先生!」

ちょっと声を張ったら、足だけ止めてくれた。

私はさっきの古典の先生の前に回り込む。


その表情は、ちょっとめんどくさそうで、そして微妙に冷たい。

近くで見ると、目立つ顔立ちじゃないのにどこか目を引くような、不思議な雰囲気があった。


「さっき私のこと当てたの、嫌味?」

「いいえ」

「じゃあ、なんで?」

「特に深い意味はありません。聞いてなかった人を当てただけです」


先生はそれだけ言って、用は終わったみたいに歩き出す。
慌てて「待ってよ」と隣を歩く。

「他にも聞いてない人、いたじゃん」

「岸さんは返事をしてくれそうだったので」

「返事……?」


足を止まりかかり、先生がまた先を行ってしまった。
それを急いで追い続ける。

「古典、つまんないから嫌い」

「そうでしょうね」

「なにそれ。面白いって思わせてよ」

「そんなに僕は頑張れません」