恋に落ちる音はしなかった。
初めて見たときから好きになったわけでもなかったし、“そのへんにいる地味な先生のひとり”くらいの位置づけで。
最初から好きだと思ったわけじゃなかった。
「まつり、今日帰りに俺んち来ない?」
だいたい付き合って二ヶ月くらいの、同じクラスの男子生徒の裕介が後ろの席から声をかけてくる。
思いっきり授業中。
思いっきり普通の声のトーン。
思いっきり授業と関係のない話。
でも、誰もなにも言わない。
みんなそれぞれ雑談しているし、寝ている人も多数いるし、授業なんて聞いてないからだ。
私は取れかけのネイルを気にしながら、「うーん」と返事だけ返す。
「今日は親も帰り遅いからさ」
「うん。まあ、いいよ」
「やった」
付き合いたてのドキドキ感は、もうないけど。
彼はそれなりに優しいし、しっかり顔もいいし、みんなに「お似合いだね」って言われる。
それぐらいの温度で、その時の私は恋愛していた。
「では、岸さん」
ふと名前を呼ばれ、顔を上げる。
気づけば、私だけじゃなくて教室も静まり返っていた。
先ほどまで雑談していた男子たちも、前で鏡を見ていた女子たちも、誰もが自然と前を向いていた。
後ろの方で「やべっ…」と言いながらスマホをしまう男子の声もする。
初めて見たときから好きになったわけでもなかったし、“そのへんにいる地味な先生のひとり”くらいの位置づけで。
最初から好きだと思ったわけじゃなかった。
「まつり、今日帰りに俺んち来ない?」
だいたい付き合って二ヶ月くらいの、同じクラスの男子生徒の裕介が後ろの席から声をかけてくる。
思いっきり授業中。
思いっきり普通の声のトーン。
思いっきり授業と関係のない話。
でも、誰もなにも言わない。
みんなそれぞれ雑談しているし、寝ている人も多数いるし、授業なんて聞いてないからだ。
私は取れかけのネイルを気にしながら、「うーん」と返事だけ返す。
「今日は親も帰り遅いからさ」
「うん。まあ、いいよ」
「やった」
付き合いたてのドキドキ感は、もうないけど。
彼はそれなりに優しいし、しっかり顔もいいし、みんなに「お似合いだね」って言われる。
それぐらいの温度で、その時の私は恋愛していた。
「では、岸さん」
ふと名前を呼ばれ、顔を上げる。
気づけば、私だけじゃなくて教室も静まり返っていた。
先ほどまで雑談していた男子たちも、前で鏡を見ていた女子たちも、誰もが自然と前を向いていた。
後ろの方で「やべっ…」と言いながらスマホをしまう男子の声もする。



