「……私とも?」
聞きながら、聞かなきゃよかったかも、と少しだけ思った。
ほたる先生は全然こっちを見ない。
「生徒全員です」
と涼しい顔で、きっぱりはっきりと断言された。
─────完全敗北。
きれいなくらい、きっちり平等。
でも、もうそれでいいと思った。
いや──そんなところがいいんだと思ってしまった。
誰かだけ特別だったら、たぶん私は、ほたる先生のことを好きになっていなかった。
先生が先生だから好きで。
先生らしい答えに傷ついて。
それでも少し安心している。
……めんどくさいな、私。だいぶこじらせてる。
そんな自分に吹き出してしまった。
「私はタメ口やめないからね。先生と距離縮めたいもん」
諦めが悪いのだけが、自分の取り柄だってちゃんと知っている。
だからこそ、それを隠さない。
ほたる先生が盛大なため息をつくのが聞こえた。
「なに言ってるんですか。勝手に縮めないでください」
「卒業する頃にはめっちゃ縮まってるかもしれないよ?」
「残念ながら、平行線です」
「未来のことなんて分かんないじゃん?」
「これだけは分かります。僕は教師で、岸さんは生徒なので」
「ほんっと堅物だよね」
「違います。常識です」
職員室に着くまで、私たちはこんな会話を繰り返していた。
勉強のことだけ、って言ってたのに。
先生は追い払ったりはしなかった。
「岸さんは距離感について、きちんと学び直した方がいいですね」
「えっ!先生がマンツーマンで教えてくれるの?」
「いいえ、」
職員室のドアを開けて、先生は振り返らずに言い切った。
「岸さんはもう自分で分かっているはずなので。僕からなにか言うことは特にありません。では」
目の前でドアを閉められたというのに。
私はどうしてなのか、口元の綻びを抑えきれなくて顔を覆ってしまった。
先生、ちゃんと見てはくれてるんだ。
それだけで、今日は十分だった。
聞きながら、聞かなきゃよかったかも、と少しだけ思った。
ほたる先生は全然こっちを見ない。
「生徒全員です」
と涼しい顔で、きっぱりはっきりと断言された。
─────完全敗北。
きれいなくらい、きっちり平等。
でも、もうそれでいいと思った。
いや──そんなところがいいんだと思ってしまった。
誰かだけ特別だったら、たぶん私は、ほたる先生のことを好きになっていなかった。
先生が先生だから好きで。
先生らしい答えに傷ついて。
それでも少し安心している。
……めんどくさいな、私。だいぶこじらせてる。
そんな自分に吹き出してしまった。
「私はタメ口やめないからね。先生と距離縮めたいもん」
諦めが悪いのだけが、自分の取り柄だってちゃんと知っている。
だからこそ、それを隠さない。
ほたる先生が盛大なため息をつくのが聞こえた。
「なに言ってるんですか。勝手に縮めないでください」
「卒業する頃にはめっちゃ縮まってるかもしれないよ?」
「残念ながら、平行線です」
「未来のことなんて分かんないじゃん?」
「これだけは分かります。僕は教師で、岸さんは生徒なので」
「ほんっと堅物だよね」
「違います。常識です」
職員室に着くまで、私たちはこんな会話を繰り返していた。
勉強のことだけ、って言ってたのに。
先生は追い払ったりはしなかった。
「岸さんは距離感について、きちんと学び直した方がいいですね」
「えっ!先生がマンツーマンで教えてくれるの?」
「いいえ、」
職員室のドアを開けて、先生は振り返らずに言い切った。
「岸さんはもう自分で分かっているはずなので。僕からなにか言うことは特にありません。では」
目の前でドアを閉められたというのに。
私はどうしてなのか、口元の綻びを抑えきれなくて顔を覆ってしまった。
先生、ちゃんと見てはくれてるんだ。
それだけで、今日は十分だった。



