ほたる先生は振り向かない

「まつりー、用事ってなんなのー?」


玲奈が机にでっかいポーチを出してメイク直しをしながら尋ねてくる。

私は彼女が見ている大きめの鏡にぐいっと身を寄せて自分の顔をくまなくチェックした。


朝にメイクした顔よりちょっと小鼻のテカリが気になる。
急いでバッグからパウダーを出してササッと化粧直しをしていると。

「ねぇ」と玲奈の不満そうな声がした。


「ここんとこ毎日どっか行ってんじゃん。図書室?…なわけ、ないか」

「ま、似たようなもん」

「なにそれ」

「これでも進路で悩んでんの」

「うっそだぁー!」


いつの間にか、私の周りにはいつものメンバーが集まってくる。
揃いも揃ってメイクを直したり、男子も髪の毛を整え始めた。

みんな鏡に夢中なのをいいことに、私はバッグをつかんで立ち上がった。


「先にやってて。間に合わなかったら別に参加しなくていいから」

「えーっ!まつりいないと動画に華がない!」

「だーいじょうぶだって」


まだ後ろでなんか文句をたれているけれど。

知らんぷりで廊下へ出ると、足早に職員室へと向かった。



••┈┈┈┈••