ほたる先生は振り向かない

外はじりじりアスファルトを焦がすみたいに照りつけて、じっとしているだけでも汗が止まらないほど。

日焼け止めも、日傘も、アームカバーも。
なにをしてももう無駄なんじゃないかってくらい、暑いし肌が痛い。


学校の自習室は、空調が効いている。
効きすぎて寒くなるのも知っているから、荷物になるけどパーカーが欠かせない。

それを羽織って、しんとした室内でペンを走らせる。

時折、小声でなにかを話す声や、鼻をすする音、立てかけたタブレットがカタンとズレる音。
色々な音が聞こえてくる。

イヤホンの音漏れは、わりと通常運転。



シャーペンをくるりと回して、問題集の同じページを三回くらい読み返す。
全然頭に入ってこない。

さっきから時計ばっかり見てる。
職員室に行くなら、今かな。

それしか考えられなくなってきた。

でも、昼休み直後は先生たちも忙しそうだし。
もう少しあとにしようかな。


そんなことを考えている時点で、勉強なんてできるわけない。


小さく息を吐いて、ペンを置く。

飲み物でも買いに行こう。
どうせなら、職員室前の自販機で。


自分で自分に言い訳しながら、お財布と古典セットを持って席を立った。

自習室はいくつか開放されている。
そこにパラパラと生徒たちが座って勉強しているけれど、案の定というか。

ひとつの教室に見覚えのある顔がぞろっと揃っていた。

さーっと廊下を歩いていると、自習室のドアが開く。